詩~『もうひとつの聖夜』

7年前に書いた詩です。『ゲド戦記』を見て思い出したので、引っ張り出してきました。 もうひとつの聖夜~星降る夜に~ 1999.11.18 まだ幼かった ある日 燃えるような夕焼けに 見入っていました。 だけど 人々は立ち止まらずに歩き去って行き ああ、私の見て…

『夜のメッセージ』

ひとつひとつは あかりのともった ただの窓 集まったら 夜に浮かび上がる 感謝のこころ 人々の帰りの足を止める

夏の貴婦人

空を覆う 低い雲が 街中から 陰を追放する あなたが 一番うつくしい日だ あなたは ほんのりと芳香を放ち あなたは きっぱりと白く あなたは 凛として謎めく ソンザイスルダケデ キセキダ さすらいの 吟遊詩人すら 恥ずかしい常套句を 口走ってしまうほどに

黄色い花

黄色い服は苦手なのに 黄色い花はきれいに見える。 黄色いコップは引き出しの隅 黄色い花は窓辺に飾る 黄色い絵の具は使わずじまい 黄色い花は押し花に 黄色い花、黄色い花 黄色い花は愛され上手

詩~『ありがとうのうた』

「ありがとう」の中でも 一番大きな「ありがとう」 それは大切に思ってもらえた 感謝の言葉 私には、私が一番たいせつ あなたには、あなたが一番たいせつ あいつには、あいつが一番たいせつ あの子には、あの子が一番たいせつ それが当たり前で それが基本で…

詩~『グレートジャーニー』

人類が こんなにもこの星の 隅々まで散らばっているのは バベルの建設に 失敗したからじゃない ここじゃないどこか 今じゃないいつか 自分じゃない何か そんなものを 目指すように 仕組まれていたからなんだ ちっぽけ草花ですら 地下茎を張りめぐらし 精いっ…

詩~『ダチョウ』

散歩してたら サバンナに出た。 生意気なダチョウと 立ち話をした。 「鳥のくせに 飛べないなんて」 「お前だって、人間のくせに 泣けないじゃないか」 「…人のいないところで 泣くのさ」 「俺だって、人のいないところで 飛ぶのさ」 僕たちは若過ぎて ダチ…

詩~『秘密』

自分一人だけの秘密 心臓の上の小石。 好きな人とだけ共有する秘密 甘い香りの毒薬。 すべての人に共有される秘密 がんじがらめの蜘蛛の巣。 あなたは 地上に現れた 最も美しいオス ただ いのちを謳歌したい その一心で せいいっぱい広げた 見えないハネのせ…

詩~『ソロ』

すべては移り変わって 一時も留まっているものはないから 僕達はいま 自分の時の独り舞台に立っている 僕達はやってきて そして。 僕達が 昨日と今日の自分が どれだけ変わっているか わからないようにできているのは 生き物を作った誰かの 優しさだろう 生…

詩~『春』

ねこは縁側で 百万年前と同じように ひなたぼっこをしている ねこやなぎは庭で 百万年目の 夢を見ている いつまでも続く春の うららかなひざしに まどろみと うつつとの境界線を 行ったり来たり うつら…うつら… この世には 私と 春と ねこと ねこやなぎしか …

詩~『楽園へ行こう』

南の島へ行こう 海を越え楽園に行こう いろとりどりの花が 咲き乱れ 垂直にさす日光を 体中でうけとめて 酸素を吐き出す 天国と地続きの場所 南の島へ行こう いつも 何かしないではいられない そんなあなたなら いっそ何もしないで 太陽と雲のシンフォニーを…

詩~『恋』

恋------何ほどの価値があろう 感情の鉄格子に囚われて むなしくあがく身であれば 手を差しのべる 景色のように きらきらとせつなく光る ああ、あれに手が届けば いっそ死んでも構わないと 恋------何ほどの価値があろう 聞けば死すら乗り越える 情熱ともな…

詩~『タンポポの酒』

私はつくる 日だまりのタンポポを 太陽の光から とりわけ金色の束を漉しとり さくさくと 小さなこよりにして 私はつくる タンポポから火の酒を 金色の花弁から 金色の液体を絞り出す 念入りに仕込んだら 月日が熟成してくれるのを 膝の上に黄ばんだ本をのせ…

詩~『ゆめみていたことは』

ゆめみていたことは ちからをかんじたにんげんが いちどはのぞんだことで だれもかなえたものがいない どんなにうつくしくても どんなにかしこくても どんなとくべつなちからをもっていようと そういうことだと しったから このごにおよんで いいたいことは …

詩~『タイムマシン』

私は時の旅人 タイムマシンに乗って あなたの生まれる 23年前の古代から やってきた あなたに会うために あなたのいなかった時を 私の言葉で伝えるために 何が変わり 何が変わらないのか 何が大切で 何が大切でないのか タイムマシンの着いた日から 地球が太…

詩~『ハロー18歳』

ハロー、18歳。 今日はあなたの誕生日 おめでとう! おめでとう! そして 生まれてきてくれて ありがとう。 それは 私には 痛みを忘れるほど あたたかい いのち。 なのに あなたには ときには 泣きたいほど 痛い いのちだね。 生きていることは 自分らしくあ…

詩の積み木

ね もし ゆめの くにまで とべるなら ネバーランド ピーターパンと ティンカーベルと そしてウエンディと いっしょならとべるね からだがおとなになって こどもとよばれなくっても こころのじかんはおわらない こころのじかんはおわらせない ね もし ひとの …

詩~『あなたはどこまで すてきになるのか』

ひとつぶの種から 大きな木が育つのは DNAという名のプログラムのせい そう聞かされて なお深まる いのちのひみつ いのちはひかりをもとめて ひたすら天をめざす。 こごえる季節ごとに 固く年輪をきざみながら。 その背とおなじほどに 根をはりめぐらしなが…

詩~『森の中の少年へ』

もうすぐ日が暮れようというのに、 まだうつむいたままなのですか 森の静けさに抱かれて 心はここにないのですか あなたの横顔は 来た道の謎に心を奪われているようでもあり 行く道の険しさを憂いているようでもあり。 あなたの唇は 何かもの言いたげでもあ…

詩~『星に帰る人へ』

あなたの魂が生まれた星は 夜空に光って 見つけられる星ですか。 それとも どこか気の遠くなるほど はるかな星でしょうか。 ふるさとの人々は あなたと同じ目をしていますか。 世界を変える力は その 深く澄んだ瞳に宿るものなのですか。 そこには 喜びがあ…

詩~『アラベスク』

しだいに明るむ 窓の明かりに 壁のアラベスクが 浮かび上がる 永遠を意味する 植物のせめぎあい 絹の道をたどるうちに 永遠は その意味するところを 少しずつ変え 生き物の匂いを 閉め出していく 細胞をもつ者が 入ることのできない エリアがある イマジネー…

詩~『あまのじゃく』

大好きな人に 忘れられないために 嫌われようと 思ったことはないですか? 言っちゃいけないことばかり 探して 選んで 大好きな人が 泣き出しそうになるまで 強い声で 「あんたなんか大嫌い!」 そういって 駆け出していく その後ろ姿 ああ あの子は自分を ず…

詩~『ありがとう』

ずっと会いたかったから 会えて嬉しかった あんまり嬉しいから 会わせてくれたもの すべてに ありがとうを 本物のありがとうを 言ってまわったの あなたを生み出したもの あなたを育てたもの あなたを世に出してくれたもの あなたを見つけられた巡り合わせの…

詩~『花占い』

大好きな人の目の中で 私はどこに立っているだろう まっすぐ見てくれなくても 視野のはじっこの私を 少しは気にかけてくれているだろうかと わからないことを わかったことにするため 頼るものはいつも同じ 花びらに託した切なる願い 「好き」「嫌い」「好き…

詩~『歌をつくる』

手紙でしか言えないことがあるように 物語でしか言えないことがあるように 詩でしか言えないことがあるように 歌でしか言えないことがあるのです あなたを見るたび 胸に異常気象が起こるので 歌をつくりたいと思うのです 歌は 天から降ってくるものなの? 胸…

詩~『背伸び』

背伸びが あたたかく見守られるのは まだ子供の証明 背伸びは子供の本能じゃないか 可愛いね愛しいねと 背伸びが その姿勢ごと 悪癖のように言われたら むごい青春のはじまりの合図 根っこは変わっていないのに とまどって 傷ついて それからどうするかは 人…

詩~『ヒュアキントス~ギリシャ神話より』

大好きな人の 自分と同じところを 見つけるのは 楽しいもの さよならをする時に 決して振り向かないこと まっすぐ歩いていくところ きっとあなたも 冷たい人だと 後ろ指をさされただろうと その胸の内など 知る人はなく その想いを ひとりだけのものにする …

詩~『母の日』

君が生まれて お母さんにしてもらえたから それが幸せだったから これ以上 感謝してもらうことなんて 何もないんだ 期待していることは 私の目の中で 君が素敵に育っていくことだから 似合わないことを する必要もないんだ マニュアルだけは置いていくよ と…

詩~『舞台俳優』

その場に合わせて すばやく七変化 観客の心臓を わしづかみにする やることすべてやった後 雄弁な背中で はけていく 残るのは 疲労の余韻と 反作用の活力

詩~『ゲーム~アイドルへ』

どんなに行き詰まって見えようとも 魔法の呪文をとなえると 今までなかった扉が現われ 終わったはずのゲームが 再び始まる いつのまにか やんわりとかわすことを覚えた あなたがたたずんでいると それは冷たい気品にあふれていて 焦りは募って ゲームはます…