10月から始まる横浜流星さん主演のドラ『LOST10』が、少しずつ姿を現し始めています。
最初に発表されたのは、主演とサスペンス作品であること、そして「すべてを疑え」というキャッチコピーでした。タイトルの「10」は、物語に登場する10人の人物を意味するようで、現在発表されているキャストは横浜流星さんと小栗旬さん。ティザー映像でも10個のマスのうち、二つが開いているという見せ方になっています。
この「少しずつ全貌が明らかになる」構造には、ドラマ『最愛』を思い出させるところがあります。あの作品では、画面上のブラックボックスが物語の進行とともに広がり、登場人物の過去と現在がつながっていきました。
『LOST10』も、単純に「犯人は誰か」を追うだけではなく、視聴者が最初に持った認識そのものを少しずつ揺さぶっていく作品なのではないかと期待が膨らみます。
『すべてを疑え』は、SNS時代にぴったりの言葉
現在のサスペンスドラマでは、複数の謎を同時に走らせ、回を追うごとに真相を明らかにしていく構造が増えています。これは「テレビ離れ」が進む時代だからこそ、視聴者を惹きつける強力な仕掛けなのだと思います。
ドラマを見て「面白かった」で終わるのではなく、
「あの台詞は何だったのか」
「あの人物の行動はおかしくないか」
と考え、SNSで他の視聴者の考察を読み、もう一度見直す。
視聴する ➔ 考察する ➔ 共有する ➔ 再視聴する ➔ 次回が気になる
というポジティブな循環が生まれるのです。「すべてを疑え」という言葉は、そんな現在の視聴環境にもよく似合います。
そしてこの言葉を聞くと、私は「ミステリやサスペンスは長い間、私たちの『思い込み』を利用してきたのだ」ということを思い出します。
私たちは、手がかりを見ているのに騙される
『アンフェア』を最後まで見たとき、真犯人が分かった瞬間にそれまでの出来事を思い返して驚きました。
よく考えれば、さまざまな場面がその人物の犯行を示していたのです。それなのに私は、「孤高のヒロインに唯一寄り添ってくれそうな人」という期待のフィルターを通してその人物を見ていました。若くてイケメンだったことも、そのフィルターを強くしたのでしょう。
つまり視聴者は「騙された」のではなく、自分自身が持っていた印象によって、目の前の手がかりを見ないことにしていたのです。
こうした仕掛けは、ミステリの大きな魅力です。思いつく限り例を挙げていくと、
アガサ・クリスティ『アクロイド殺し』:物語を語る人物(語り手)そのものへの信頼が利用される
『オリエント急行殺人事件』:「犯人は一人」という読者の前提そのものが揺らぐ
映画『ユージュアル・サスペクツ』:観客が「証言された物語」を信じること自体を利用する
映画『シャッター アイランド』:主人公が見ている世界そのものを疑わせる
優れたミステリは、単に犯人を隠すだけではありません。「あなたは、なぜこの人を信じたのですか?」と、最後には観客自身の「認識」を問い返してくるのです。
『LOST10』では、横浜流星という俳優自身も「謎」になる
ここが、私にとって今回の作品のもう一つの楽しみです。
横浜流星さんは、演じることについて非常に深く言葉を尽くして語ってくれる俳優です。それなのに、本人についてはなぜか核心の部分がつかみにくい。一般には「イケメン俳優」という言葉で簡単に分類されがちですが、それだけでは説明できない底知れなさがあります。
私が横浜さんに惹かれた最初の作品は『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』でした。父親を失った青年の復讐譚の中で、普段は感情を抑えているのに、ふとした瞬間に本当に人を殺しそうな顔をする。その一方で、女性を抱きしめる場面では本当にその人を愛しているように見える。
そこで感じたのは、単なる美貌ではなく、感情を表に出さない人物の内側を身体と表情で見せる「俳優としての力」でした。
だからこそ、「すべてを疑え」という作品で横浜流星さんを見るとき、登場人物だけでなく、私たちが「横浜流星」という俳優に対して持っているイメージも、少し疑ってみたくなります。
美しい顔立ちは、もちろん彼の大きな武器です。しかし『ヴィレッジ』のようにその美しさを抑える役にも挑む一方で、作品が美しさを必要とするなら、メイクも含めてより美しく魅せることを厭わない。これは「美貌を捨てたい」ということとは違うのでしょう。むしろ、美しさも醜さも自分の身体を使った表現の一部として扱っているように見えます。
『国宝』で李相日監督から「脱力してみなさい」とアドバイスされたという話も、今後の横浜さんを考えるうえで非常に興味深い点です。
美しく見せることをやめるのではなく、美しく見せることも、美しく見せないことも自分で選べる俳優になる。その先には、若さや美貌だけに依存しない「30代の俳優像」があるのではないでしょうか。
小栗旬さんとの化学反応にも期待したい
そして今回、横浜さんが長く共演を願っていたという小栗旬さんが加わります。
小栗さん自身、若い頃には「イケメン俳優」として注目されながら、その枠を大胆に飛び越えてきた俳優です。『荒川アンダー ザ ブリッジ』でカッパの村長を演じたことなどは、まさにその象徴でしょう。(阿部寛さんもまた、モデル出身の二枚目から、二枚目であることさえ笑いに変えられる実力派へと転換した俳優です。)
横浜さんがこうした先輩俳優から何を吸収しようとしているのか。そして小栗さんと接することで、横浜流星という俳優がどんな方向へ変化していくのか。これはドラマのストーリーとは別の、もう一つの楽しみです。
10人の人物の正体を追いながら、同時に「横浜流星とは何者なのか」も見ていく。
『LOST10』は、作品の中だけでなく、「横浜流星という俳優自身が、視聴者にとって解き明かしていくべき謎の一部になるドラマ」なのかもしれません。
まずは、すべてを疑ってみましょう。
そして最後まで何を信じていたのか、自分自身に問い返すところまでじっくり楽しみたいと思います。