詩~『もうひとつの聖夜』

7年前に書いた詩です。『ゲド戦記』を見て思い出したので、引っ張り出してきました。




もうひとつの聖夜~星降る夜に~
1999.11.18


まだ幼かった
ある日
燃えるような夕焼けに
見入っていました。
だけど
人々は立ち止まらずに歩き去って行き
ああ、私の見ている夕焼けは
ただ私だけの夕焼けなのだと
その終末のような美しさを
分かち合う人はいないのだと
一人で泣きました

またある晴れた日
空を見ていました。
虚空の入り口
悠久の扉
だから 寂しくて
だから かたちにしたくて
長いことかかって
スケッチしてみました。
空の雲は写真のように
じっとしているようでいて
ふと気がつくと
姿を大きく変えているものでありました。
やがて
雲はいのちとこころを持ち
天使の純白の羽になって
羽ばたくようでした。
だから一人でも大丈夫なのだと
そう思いました。

そしてある夜
降るような星を眺めて
私には愛する人たちがいて
たとえ別々の場所
別々の時間でも
眺める星は一緒だということ
それを私が知っているということ
それをなによりも
幸福だと思える自分を見つけました。

11月18日
もうひとつの聖夜
きよしこの夜
あなたが生まれた日。
オリオンの美しい秋の日。