『花よりもなほ』さて、そろそろ書く

映画見てから、3日経った今、イメージに強く焼き付けられているもの。

宗左が開いている寺子屋で、余所見をしている子供を、宗左が優しく叱るシーン。子供にこんなに優しく触れること、演技でとは言え、誰もができるものなんだろうか。私が記憶している限りでは、我がアイドルは16の頃からこうだったが。

父親が死んでいることを知らされていない、まだ8歳の進坊。しかも、殺されたことを知らないで、父親を殺した仇の似顔絵を父親だと思い込んでいる進坊。それを悟って、思わず進坊を抱きしめてしまう宗左。こんな大人の男性に会ったのは、進坊、初めてだろう。滅多にいない人だもの。

そんな優しくて穏やかな宗左が、そで吉とやりあっている内に、闘争本能をだんだんかき立てられていくシーン。まったく戦う意志がない人、というわけではないんだな、だけど、弱いのは戦いの最中で冷静さを保てないせいもあるみたいだ。戦いは、宗左にとって、自然にできることではないみたい。なんとなく、映画『フルメタルジャケット』の軍隊の訓練シーンを連想してしまう。

そんな殺気の余韻をひきずったまま、あざだらけの顔で、仇を見つけて、見つめているシーン。宗左が、こんな顔しちゃうんだ。

仇を追う宗左のために、藩から支給されていたお金を、母親と弟が着服していたことを知った宗左の顔。宗左に見られて、妙なリアクションする母親や弟。ちなみに、二人とも、早朝、仇を討つ稽古を欠かさない。二人とも、どうも、愛する人を失った悲しみ怒りが仇を討つ動機ではないらしい。また、そんな家族を見て、宗左が心に抱くのは、どうやら怒りではない。ほんの少し寂しさの混じった諦観……?

信じられないほど汚い長屋。もともとV字型のくぼ地になっていたところに、いい加減な基礎+柱で作った安普請の長屋。しかも、雨仕舞いがなっちゃいない(どぶ板のある排水溝がない)ので、深い水溜りがある。これでは、室内の湿気もさぞかしひどかろう。道理で畳がべこべこしている。これで店賃をとるとは、良い根性してるな、大家。
汚い衣服と肌。痛んだ髪。『七人の侍』のリアリティを思い出した。

つづく