本>「裁判官に気をつけろ!」日垣隆

本題に入る前に、今日「ほんとうに読んでほしい本150冊」をコンビニで買ってぱらっと読んだ感想を。
三浦展さんと勝間さんが「原材料の本」と呼ぶ本のリストは、とてもありがたいと思った。
社会科学の良書をもっと読みたい、と思っていたところだったので。
だけど、対談を読んでみて、私はこのムックの対象年齢からうんとはずれているんだろうな、と感じた。
勝間さんから「教えて君」とカテゴライズされているかも(笑)。
でもいいの。売り手が対象を設定したところで、買い手はそれには構わず自分のニーズで買うのだから。

さて、こうやって生活や自分を改善させるきっかけとなったのは、日垣隆さんのブックリストにあった本を大人買いしたことからだというのは、前にも書いたとおり。
この人の本は、夫が好きで時々トイレの書棚に置いていて、私もぱらっと読んで、とても心惹かれるものがあったのだった。
今回、この「裁判官に気をつけろ!」が文庫化されたと紹介されていたので、購入の上読了。
目からウロコが落ちた。
「犯罪を不成立にする七つのルール」の章を読んだとき、直観することがあった。
デスノート』が、原作のコミックよりも、映画の方が、不起訴になって野放しにされる犯罪者たちに対する憂いが色濃く描かれていたこと。
これは、ひょっとして、この『裁判官~』を踏まえた上での脚色ではなかろうか。
あの、いかれた犯罪者たちに対して、主人公ライトと同じように、義憤で体が震える思いがする。
原作にはない、ライトが六法全書を道端に叩きつけて捨てるシーン。
少なくとも刑法は、ドブに捨てられても仕方がない。
この本を読んでから、もう一度『デスノート』を見ると、あのシーンがより一層リアルに思えることだろう。
そして、ライトの最期の言葉の数々。ライトの父親がライトに語る熱い言葉の数々。
でも、ライトも父親もひとつだけ間違っている。
刑法がここまで破綻しているのは、世界中で日本だけだ。
だから、デスノートをこうやって使うのは、戦略として少しまずいし、ここまで法律を(可能性も含めて)信じる根拠もない。

それから、第五章から第九章までは、性暴力についての、裁判の理不尽さが書かれている。
これは、『それでもボクはやってない』を連想。
いや、この映画は、痴漢条例ができてから冤罪が頻発したことを憂う物語りだった。
だけど、それ以前では、どれだけの性暴力が訴えても泣き寝入りで終わってきたか。
「男には女を守る本能がある」なんて、とかく男性は、自分の男性性を女性を使って美化したがるけれど、それが的外れなのはデータが示している。

それにしても「裁判官」をキーワードにアマゾンで検索すると、裁判官を批判的に論じているらしき本がたくさんひっかかる。
国民の、裁判に対する関心が高まったせいだと思う。裁判員制のせいかな?
ついこの間までは、こんなではなかった。

というわけで、その中でもこの一冊。「ともかく読んでみて」とお勧めする。