観てきた。
原作コミックの評判だけは事前に聞いて、ずいぶん昔にあったゲームソフトのことを思い出した。
それは、屈折した暮らしをしている主人公が、過去にあったことをただ繰り返し「観る」だけの能力を突然授かる、というものだ。
過去をやり直すことはできないで、ただ観るだけなのだが、大人になった目で過去を見ることで、認識が改まり、現在の改善につながっていく、というものだった。
私は当時、もしそんな能力が現実にあるのなら、ぜひ授かりたいものだ、と思った。
子供だった自分の認識力の拙さを、ずっと後で何度も悔しく思ったからだ。
「ああ、あの時、『このこと』に気がついて正しく行動できていれば、もっといい結果が得られたはずなのに」という悔しさだ。
子供の持っている悲哀というのは、多くはここから出発する。
だから、この「僕だけがいない街」という物語には、それがしっかりと描かれているはず。
そんな何か特別な気持ちを抱いて映画を鑑賞した。
すごく良かった。
子供の頃、大人に対して感じていた不気味さが、余すところなく描かれていた。
「子供だからわかんないだろう」「子供だからどうにでもできる」と高をくくったキモチが透けて見える。
子供は弱い分、生き延びるために、それらを読む能力だけは授かっているのだが、大人はとっくにその能力を失った上、それを持っていた記憶も失くしているので、子供の前でへたをうつのだ。
そして、子供は怯えはするものの、逃げる先の当てがなければいつも無力だ。
問題が生じた時、それを修正できる時間までさかのぼる「再上映(リバイバル)」という能力を授かった、売れない漫画家の悟は、大人の心を持った子供として、タイムスリップする。
もう、この存在にしか、救えない命がある。
漫画家として、ヒーロー物に「自分を乗せる」ことができないでいた悟にとっても、それは自分の人生を救うことに繋がる。
この辺りが心憎い設定だなあ、と感じる。
大人パートの藤原竜也さんや有村架純さんもさることながら、子供たちの熱演は、もう素晴らしいの一言に尽きる。
あの子たちがあれほどでなかったら、とても成立しない物語だ。
これを観れただけでも、足を運んだ価値があった。
・・・藤原さんは、あまり普通の人の役が来なくて、超能力者とか、内面がこじれている人とかばかりなのを気にしているは、ただのジョークだろうか。本心だろうか。
はまり役がひとつ出てくると、何となく固定席みたいになってくる傾向は、確かにあるように見える。
それでも、こんな特殊な状況にここまでリアルに導いてもらえるのは、観客としてはありがたいことだと思う。
というわけで、おすすめ映画でした。