DVD>映画『マディソン郡の橋』『魂萌え』

これは、藤原竜也さんゆかりの映画鑑賞である。

マディソン郡の橋』は、藤原さんがまだ十代の頃、バラエティ番組で「大人の恋愛ものを演じてみたい」という希望を述べた際に例に出した、という映画だ。
それまで、ただ中年に差し掛かった男女の恋愛の物語、というだけの情報しか持っていなかった。
もとより恋愛ものは、守備範囲外である。
だけど、藤原さんが「いい」と言うのであれば仕方がない。
借りて見てみた。
藤原さんは……10代で、この二人の気持ちが自分のものとして想像できるんだとしたら、やっぱり普通の少年ではなかったのね。

私ともあろうものが、恋愛物で泣いてしまった。
クリント・イーストウッドとだったら、恋愛できる。
女の人を、あんな優しい目で見る男性って。
でも、こんな人、いない。
いたとしても、私はきっと好きになってもらえない。
一生懸命生きてきたって、そんなことは恋愛感情とは無関係だから。
その当たりは、男女は対称ではない。
……いいや、そんなことを含めて好きになってくれる、素晴らしい男性だった、っていうお話なのだろうか。

最後、街で車ですれ違って、もう二度と会えないんだな、と無言で涙のお別れをするシーン。
夫は、様子がおかしい奥さんを見て、ラジオをつける。
だけど、奥さんが好きじゃない番組にセットしてしまう。
とりあえず、奥さんを愛しているし、気を遣ってもいる。
でも、奥さんに何を聞かせてあげれば、心を休ませてあげられるのか、まったくわからないのである。
奥さんは、この世で自分に最もぴったりの男性と、世間を慮って別れつつあるところだから、余計に辛くなる。
あの人だったら、きっと奥さんが好きそうな、素敵な音楽にぴったりセットしてくれるはずだから。
夫にとっても、それは辛いことなんだろう。
あー、なんだか、こういう夫婦、たくさんいそうだ。

……藤原さんは、クリント・イーストウッドみたいに、いくつになっても男性として魅力的な人でいそうだ。
さすがに、『マディソン郡の橋』の時みたいに、65歳だったら、私はこの世にいないだろうけど。
それはとても残念だ。

続いて『魂萌え』。こちらも藤原さんゆかりの鑑賞である。
『カメレオン』の阪本監督の作品の中で、藤原さんが好きだと言っていた映画だったので、見てみた。

役者の芝居だけでその場の心理の変化を表現していく、見せ場の多い映画だと思った。
だけど、『カメレオン』や『亡国のイージス』を撮った監督が、なぜこんな年配の女性の地味なお話を描いたのだろう。
それがとても不思議な感じ。
しかも、男性にとって都合のいい論理を女性に押し付けていないのが余計に不思議。
むしろ、そういう男性のやりがちなことに対して、嫌悪すら持っているような。

最初は、主人公に対していらいらしていたのが、だんだんと落ち着いて見られるようになっていった。
「私は変わりたいんです!」の言葉が、印象的だ。

藤原さんは、監督の数ある作品の中で、これを選んだ。
とても象徴的だと思った。
藤原さんが気に入った映画の話をすると、優しい人だな、と思う。
また話をいろいろ聞かせて欲しい。