「フライ、ダディ、フライ」-(1)

ドラマ「SP}のヒット祈願に、映画公開時の感想を。既にヒットしているようだから、あまり関係ないけれど。

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2005.7.11
さてさて、待ちに待った『フライ,ダディ、フライ』を見てきた。土曜日、日曜日の2回。簡単に「感動した」って言ってしまうのは、ちょっと悔しいな。何しろ、男祭だし(笑)。一番好きだったこと。青空と白い雲が、物語のポイントポイントで、とても印象的だった。一番最後の、鈴木さんの白い羽根になる白い雲がベストだけど、山下くんが病室の窓の外に吊るされている時の、バックの青空も良かった。そして、スンシンくんが鷹の舞を舞っている時の、それぞれの青空も。

ところで、原作を読んでいる時、敵討ちを云々、という部分を脳内で切り捨てて、純粋にスポ根として読み替えていたので、それほど感じていなかった。だが、やっぱりこういうテーマで書いていると、筆がすべって、つい差別的な書き方をしてしまうものだ。最初の方に出てくる、痴漢に間違われて殺意が云々、というところ。そして、娘の「美貌」が誇りだと思うところ。鈴木さんがこういう人だったら、敵討ちをするのに義憤の部分が弱くなってしまう気がした。鈴木さんが醜い女性に殺意を覚えるのと「同じ回路で」石原は、自分を拒否する可愛い女子高生の顔を暴力で変形させたのだと思うからだ。このあたりは、長く女性をやってる人なら、体験的に理解してもらえることだと思う。手放しで鈴木さんを応援しにくくなってしまうのだ。「同じ穴のナントカなんだから、勝手にやれば?」になってしまう。映画ではそれを削った上、設定が少し変わって駅まで車で夫を迎えにきてくれる、優しくてしっかりした奥さんと、子供っぽさの残った可愛い女の子になった。そして、夫がいざという時に娘のためにすごいスピードで走ってくれたことを、大事な場面で思い出すのは、やっぱり鈴木さん自身じゃなくて、奥さんじゃなきゃだめだと思って、映画の設定にはかなり納得いくものがあった。戦いに向かうのが、鈴木さんの自己満足から、これで解放される。この変更は監督の意図だろうか、作者の意図だろうか。……こうやって考えると、ちょっとしたディティールの違いで、底に流れるものがどんどん違ってしまうものなのだな、と思った。面白い。

それにしても、鈴木さんの頑張りがリアルで良かった。最後の方の堂々たる走りなど、つい見とれてしまった。筋肉を作る酵素は男性ホルモンの中にあるわけで、ある意味、運動で身体がどんどん作られていくことは、男性らしさそのものだとも言える。そして、腕をむき出しにした、スンシンくんの美しい肢体と、しなやかな動きには、もう言葉もない。

来週、また見てくる。