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「神は妄想である--宗教との決別」リチャード・ドーキンス 早川書房

過去倉庫にずいぶん前に書いた「神の不在について」というタイトルの文を再掲した。これについては、911以降の日本人の少なくない人数の人たちが考え続けていることだろう。私も、あれからもずっと考えて、読んで、また考えて、というのを続けている。神様にしろ何にしろ、人間を超えた意志の存在を根っこから否定しないといけない戦略上の理由がこっちにはあるからだ。でも、何かが「ない」ことを証明するのはほぼ不可能だという論理上の枷がある。それをどうやって克服するか……と悩んでいたら、ドーキンスが完璧にクリアしているのを読んで、気が楽になった。オセロの四隅を抑えた気分だ。
神が存在する根拠となっている論を、進化論を主たる武器にひとつひとつ潰していくドーキンスの語り口がすかっとする一冊。


「反☆進化論講座 空飛ぶスパゲッティモンスターの福音書ボビー・ヘンダーソン 築地書館

また、進化論に反対するキリスト教に対して、搦め手で反論を試みるのがこれ。一見、たちの悪いとんでも本のようだが、本の最初から最後まですべて皮肉、アイロニーで出来上がっているのがわかった途端、キリスト教がいかに破綻しているかが深く理解できる。ドーキンスが絶賛したというのも無理はない。


「スーパーセルフ 知られざる内なる力」イアン・ウィルソン 未来社

タイトルや目次を読むと、オカルトをメインテーマとしたとんでも本のように見えるが、実はまじめな本だった。人間の無意識は、フロイト以前の世界では、自分の「内側」にあるのではなく、「外側」にあるものと思われてきた。神もそのひとつだ。その無意識「スーパーセルフ」が絡んでいるのではないか、という現象について、ジャーナリストである著者はひとつひとつバランスをとりつつ、切り込んでいく。ドーキンスが先に上げた本の最後の章あたりに、幼児がよく「見えない友達」と遊ぶ、こうした心の働きが、神の生成の原因ではないかと推測している。この本ではもっと突っ込んで、現象全体が見渡せるようになっている。ちなみに、本に影響されて、水晶のペンジュラム(写真)をネット通販し、ダウジングを試みているが、確かに、書かれている通りのビビッドな反応が現れて面白い。話を戻すと、「外側」にあると思い込んでいたものが、すべて「内側」にあるものだとすべてが納得する時代が来たら、それは人類史の中でも飛びぬけて革命的な時代となるだろう。

これらみっつをあわせて読むと、脳内でつながってつながって、ちょっとした快感であった。この後、ディックの「VALIS(ヴァリス)」を読むと、さらに飛べる。

ところで、マザー・テレサが生前、知人に神への疑問を書き送っていた、というニュースを知った。マザーにについて、「神を信じているかどうか疑問」と書いた日本の作家がいたが、慧眼だった。マザーは苦しんだかもしれないけど、これで、マザーの名誉を損なうことなく、良い流れが生まれると思う。

「神はいない」これで、人類はちゃんとやっていけると思う。