『働く喜びってなんですか?』06/03/19 塩野米松さん

仕事をしている人たちにインタビューして、『聞き書き』というスタイルで本にする・・・・・・。
そんな作家活動をしておられる方がいることを初めて知った。
小説家になりたい、というのがあって、でもそのきっかけとして一歩踏み出してみたのがこれだった・・・・・・そういうお話だと解釈したのだけど、正しいだろうか。

CADがまだ業界に浸透していなかった頃、某業界紙の記事のために、建築家や建築学の教授のインタビューをテープ起こしする仕事をしたことがある。
一般のテープ起こしの人だと、建築の専門用語などを聞き取ったり正しく表記したりできないので、できれば専門の人を、というので、友人のつてでまわってきた仕事だった。
もちろん、最初は慣れていないので信じられないほど時間がかかったが、どんどんスピードがあがり、遂にはテープをストップさせずにタイピングできるようになった。
そして、ひととおりタイプすると、何度もテープを流して、プリントアウトした文をチェックする。
そうやって、初めて「これはかなり素晴らしい話なのでは?」と気がついた。
耳で聞いただけでは理解できなかったことが、不思議なことに、文にすると理解できたりもしたのである。
だけど、普通に本を読んだだけでも、これほど面白く感じたりもしなかったのではないだろうか、と思った。
そうやってできた文をデータで納品した。インタビューされた人は、それに自分で肉付けしていったらしい。
この方式でが普段書かない人でも、本が書けるなあ、とその時に思った。
ドストエフスキーが、速記者を使って聞き書きで小説を出したことがある、というエピソードも頭にあった。
最初、ゲストの方のプロフィールを見て、こんなことを連想していたのだけど、お話のメインは、そうやって聞き書きでであった「仕事をする人」たちと接した上で掴んだことの話だった。
でも、たぶんこの方法でしかつかめないいろいろなことを掴んでおられるんだろう、と期待が高まった。
やっぱり「からだ」の話が出てきた。仕事は「あたま」と「からだ」と「感覚」なんだと。
なんだか、すべてが丸く繋がって輪になっていくな、この番組。
わくわくする。

ところで、働く喜びというと・・・・・・私は感じているから、むしろこのテーマはパス! なんて。
仕事は好きだけど、いいことばかりじゃないのは当然だ。
それでも、お金が十分にあったら仕事をやめるかというと、それはわからない。
この仕事ならではの達成感はあるんだけど、クリエイティブかというと、それほどでもない。
仕事をしていると、人柄が出てるといわれるけれど、自分ではどうしてもわからない。
岡田くんが、最近、役者を一生続ける意思があるかどうか、微妙な発言をしているけれど、何となくそんな自分のあいまいな気持ちと重ね合わせていた。
どう生きるか、ということ、なんだよね、最後は。

岡田くんが、じっと目を見て一生懸命話を聞きたい、という風に聞いていることで、相手が話してくれるなんて先生がおっしゃるから、その場面が目に浮かんでほほえましかった。
仕事を長く続けている人には、人に伝えるべきいろいろな知恵があると思うのだが、なかなかそれを聞く機会はないだろう。
実にもったいないことだと思う。