『ブラザーズ・グリム』

危なく、書かないで忘れるところだった。
土曜日、レイトショーで『ブラザーズ・グリム』を見てきた。
テリー・ギリアム作品は、いつもおとぎ話が濃縮されているようだったが、
今回は、もうそれを全面に押し出している感じ。
おとぎ話と言うと、基本がハッピーエンドで、楽しい物語のようにも感じるが、
人間の残酷さ、弱さに裏打ちされているようで、
ヨーロッパ物となれば、日本のそれよりずっと毒々しい感じがする。
何となく、こんなのを見てみると、ヨーロッパというのは、
キリスト教によって自縄自縛に陥って、
外に排出していた毒が全身にまわってしまった文化なのかな
という気もした。魔女裁判なんて、どうして起こったのか
不思議な感じがしたけれど、人間の内なる自然に逆らおうとすれば
当然のような気もした。

グリム兄弟は、冷徹な実務家の兄、
夢想家でロマンチストの弟、というペアだったと聞くが
それが映画ではコミカルに描かれている。
鏡の女王が、恐いほどきれいで、
この人がいなかったら、この映画は撮れなかったろう、と思った。
はて、どこかで見た顔、と思ったら、
マトリックス リローデッド』のパーセフォニーだったか。

人間の持つストレスの中で、死のストレスほど大きなものはない。
それを和らげる方法はいくつかあるが、
おとぎ話は、人間がそのひとつとして、
古くからずっと、他の生き物……時には他の人間……の
いのちを奪い続けてきたことを暗に示している。
永遠のいのちを求める魔女という存在によって、
映像で象徴的に示されて、あらためてこのテーマの普遍性を感じた。
過剰な生への執着は、妖しい魅力を持つけれど、
やっぱりどこかグロテスクなものなのだ。
しばらく、このテーマにはこだわりたいと思う。