『ゲド戦記』星のいのち

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土曜日の午後、降り続いていた雨が上がって、空に虹がかかった。虹はすぐに消えてしまったけれど、雨雲の間から青空がのぞき、日が沈むまでの間、空はすばらしいアートを描き続けていた。そんな空を、走るバスの中から眺めていると、雲がいのちとこころを持ったものに見えるという、久々の感覚にとらわれて、壮大かつ幸福な気分になった。その雲は、『ゲド戦記』のホームページの壁画の竜に、とてもよく似ていた。

ところで、竜と言えば、思い出すことがある。子供の頃から、インパクトのある物を見た後、それが化学変化した夢をよく見る。高校生の時、京都のお寺で天井に描かれた墨絵の竜を見た後、こんな夢を見た。浜辺に一人で立って海を見ていると、空がいきなり雲に覆われて暗くなった。沖の当たりから竜がするすると昇りはじめる。やがて空は、竜の体で満ちて隠れてしまった。私の感覚では受け止められないほど、巨大な竜だったのだ。その竜の頭がするすると近づいてきた。「食べられちゃう」、そう思っても足がすくんで動けない。でも竜は、私をそっと優しくくわえて、そのままものすごいスピードで天を目指して飛んだのだった。
この夢を見たのは暮れのことだったが、偶然にも年があけたら辰年だったので、何か縁起がいいような気がした。

原始宗教における、あらゆるものにいのちとこころを感じる感性は、生命のリズムが地球環境のそれと同じであることに根ざしている、と言う人がいる。そうかも知れない。もしそうだとしたら、今だってその原則はなくなってはいないはずだ。じゃあなぜ、人間はそれを壊して再構築することに、ここまで熱中するようになったのだろう。人間とはいかなる生物、なんだろうか。

宮崎駿監督が、『ゲド戦記』をアニメ化できなかったときに、代わりに作ったのが『風の谷のナウシカ』だったと聞いた。すべては繋がっている……やっとリアライズできたような気がする。