人生を変えた読書&鑑賞 その5~『エイリアン』『ザ・フライ』他

人生を変えたシリーズの五弾目。
今回は映画だ。
ただし、今回はすごく軽いテーマなので、今まで散々ディープに書いてきたのと雰囲気が違ってしまう。
でも、人生というか、生活をがらっと変えるだけの影響力を映画は持っている、というコラムを最近どこかで読んだ。
アメリカで、週末の乗馬人口を増やした映画の話とか。
それを読んで、自分のライフスタイルを完全に変えてしまったいくつかの映画のことを思い出したのだった。

 

まだ一度目の結婚をしたばかりの二十代の頃、映画『エイリアン』『エイリアン2』を見た。
この映画は、宇宙船の中で途方もないモンスターに襲われて、たった一人の女性が生還する。
知らない人はいない名作だ。
だが、私がこの映画で最も印象深かったのは、主人公リプリーの下着姿だ。
ノーブラで、白いTシャツと骨盤にきわどくひっかかった感じの小さなパンティ、が一作目。
同じくノーブラで、グレーのランニングとハイレッグのパンティ、が二作目。
何だか見た瞬間「これぞ戦う女の正当なコスチュームだ!」と感動した。
もともと思い込みが激しい性格で、下着類まで母親がお仕着せするもの以外に、自分で買うことができないでいた。
ぴらぴらしたレースや刺繍のついた下着を、嫌だ嫌だと思いながらも仕方なく着ていた。
20歳もとっくに過ぎていたというのにおかしい、と思う人も多いことだろう。
母親の洗脳を断ち切るのは、本当に容易ではなかったのだ。
それが、この映画のこのシーンを見て、すっかりまいってしまった。
こんな女性になりたい。まずは形からだ。
当時は、グレーの女性物の下着がなかなか見つからなくて苦労したが、やっとあるショップでリプリーのによく似た「まったく可愛げのない」セットを見つけることができた。
それからは毎日ずーっとそれを着けて生活。
するとしばらくして、会社の同年代の男子社員にこっそりと言われた。
「何を着ていても文句は言わないけど(どうせ作業着上に着るし)、ノーブラだけは勘弁してくれないか」だって。
「ええっ?!ノーブラってわかるの?」と驚いて聞いたら、
「あったりめえだろうが!!!」とどやされてしまった。
当たり前? どこがだ? 理解不能だ。
平素は無神経極まりない人が、その分野だけはずいぶん敏感なことだ。
気をつけねば。
シガーニー・ウィーバーは胸が小さいから、ノーブラで構わないんだよね。
私は、75のDカップだけど、かなり無理があったってことなのかあ。
「戦う女仕様」は、かくして妥協を余儀なくされたのであった。
最近は、フィットネスブームのおかげで、スポーツ仕様のものがたくさん出てきた。
ストラップが背中の真ん中で繋がっているような、水着やレスリングのユニフォームみたいなブラとか、ボクサーパンツみたいなのとか。
実にありがたいことだ。

 

私は、ともかく、服を買うのがとても面倒くさい人間である。
私が服に気をつかうことがあるとしたら、「服に気を使わない人、というレッテルが戦略上まずいと判断された時」だけだ。
できるだけ、楽で、シンプルで、洗濯や着回しが効き、不潔な人・無頓着な人という印象を与えないこと。
そんなある時、映画『ザ・フライ』を見た。
古い名作SF『蝿男の恐怖』のリメイクだ。
モンタージュのように人間と蝿が合体してしまう前作とは異なり、DNAレベルで融合してしまう話となっている。
この辺りは科学知識の進歩を受けてのことだろう。
だけど、私が気になったところはそこではなかった。
主人公の科学者が、服を考えるのが面倒なので、同じコーディネイトのセットを5組、クローゼットに用意していたところ。
「何を着ようか悩む時間のロスをなくせる」ということだった。
今で言うアラサーの私は、うっとりしてしまった。
そんな素敵なアイデアがあるんだったら、何でもっと早く教えてくれないかなあ、なんて。
さっそく実行だ。
もっとも、5組のセットを揃える、ということには抵抗があったので、できる限り、ぱっと手に取ったものをばたばたと着こんでも、おかしくならないようなワードローブ作りというのをやってみた。
自分が好きでない、従って似合わない色を追放するところから初め、
好きじゃないスタイルの服・靴・バッグ、などを追放していった。
何かを買うときは、このルールに合ったものだけを買う。
冒険したい時には小物で。
そして現在に至る。
年々、暮らしやすくなっていく実感がある。

 

映画を見ていて、「これは私のライフスタイルに取り入れられるかも」と思うものは多い。
何となく、単純なアイデアのようでいて、それまで気がつかないでいたことばかりだ。
こういうことがあるので、映画はやめられない、と思う。