人生を変えた読書&鑑賞 その3『IT』

さてさて久しぶりに。

休暇中に、『自堕落モード』と称して、普段だったら切れ切れの時間でしか読んだり観たりできない本やDVDなどをぶっ続けで鑑賞する、という習慣が我が家にはあることは前にも書いた通り。
お金をかけずに時間をたっぷりかけて楽しむ、至福の時である。
娘がまだ小学校低学年の正月に、『IT』の原作を一気読みした。
映像のビデオを見て感動した直後に買って、読むのをずっと楽しみにしていたのだ。。
これは、説明するまでもなく、米国のホラー作家、スティーブン・キングの『Stand』と並ぶ代表作である。
ただ、いかんせん長い。
あの頃は、まだフォトリーディングも知らなかった頃だから、自堕落モードの全部を費やして一気に読了したのだった。
眠っている以外はずっと本を読んでいた。

ハウツーものも目じゃないほど、小説から多くのことを学ぶことがある。
その頃、幼い娘がいるにも関わらず、子供がどういうものなのか、時々わからなくなって不安だった。
スティーブン・キングは教師だった経験があるそうだ。
そのせいだろうか、時々、子供を育てるのに貴重なヒントをもらう。
著作の中からたくさん拾ったヒントの中で、私が娘を育てるのに、一番役に立ったヒントが、この本の中にある。
主人公たちが、10歳の少年少女だったのが大きい。
はみ出しっ子7人の中の、黒人の少年マイケルの父親が、忙しい中で息子を知的に育てるためにやったこと。
それは、息子にミッションを下すことだった。
それは、すべて置手紙のような文字情報で息子に渡される。
そして、その内容は、例えばどこそこに出かけていって、これこれの物を調べて来い、手に入れて来い、というようなもの。
息子がそれを実行することによって、得難い経験と知識を積めるように、それらは緻密に計画されている。
そばにいるわけではないのに、いつも息子に寄り添い導くような、父親の暖かい愛情を感じる。
これは使える!

私は、母親だけど、同時に娘の父親役もこなさなくてはならない。
片親、というわけではないけど、まあ実質片親なので。
この小説の、このマイケルのエピソードには大いに感動し、さっそく戦略を立ててやってみた。
三歳の時には、「はじめてのお使い」は済ませていたけど、生活していくためには、何が必要で、いくらかかるか、計画を立てていくところからできなくてはならない。
そんなことを全部洗い出して、どの時点で何をマスターさせようかと計画を立てた。
私の場合はだいたい口頭で指示した。
一番の話し合いの時間はお風呂タイムだ。
中学生の時までには、衣類は全部自分でワードローブを揃えられるようにした。
美容院も一人でいけるようにした。
引っ込み思案だった娘には、店の人に希望を伝えるデザイン書の書き方を伝授した。
図面を描くのが私の仕事なので、この当たりはお手の物。
仕事が子育てに役立つこともあるのがわかって、これはとても嬉しかった。
自分パソコンは、小学校高学年の時に買い与え、
中学生の時から、インターネットに繋いで情報を集めさせるようにした。
中学の転校手続きは自分でやらせ、高校生の時には、予備校等の手続きも自分でやるようにさせた。
大学生の時にはネットで、免許合宿と、旅行の全工程のプロデュースを4回。
ダンスレッスンのスタジオも、自分で体験レッスンをしてまわって、自分で決めてきた。
今、就活を主体的にこなしているし、私の計画もほぼ満点に近い成績で完了に近づいている。
ハウツー物の、子育て指南書みたいなものでなく、小説だったのが、逆に私にはよかったのかも知れない。
スティーブン・キングさまさまである。
今、娘に聞いたら、「一度も困ることもなく、経験を積めて、すごく良かった」とのことだった。うるっ。
一見、枝葉が多くて長過ぎる小説が、私の人生をこうやって改善してくれる。
人生に大切なのは、人間もそうだけど、いい出会いじゃないか、と思う。

「ミッション・ノート」みたいなものを作って、娘の成長を残せたら、もっと良かったのに、と今になってちょっと後悔しているが、これは孫のための戦略としてとっておこう。

というわけで、人生を変えた読書の三弾目でした。