『憲法ってなんですか?』 05/11/20 伊藤真さん

11/20放送
伊藤真さん
番組の傾向として、哲学とか、心理学とか、社会学とか、スピリチュアルな分野を中心にゲストを呼ぶのだと勝手に思い込んでいた。蓋をあけてみると、政治学をはじめ、実学の人が多くて、意外な気がする。それは、我がアイドルに対する私の偏見というものだろうか。ただ、岡田くんが好きなばかりに番組を聞いていると、普段考えたこともないような分野について、週一回話を聞くのが習慣になる、というすばらしいこの試み。さて、私は誰の手のひらの上で転がっているのであろう。

ところで、「福祉」「法律」「人権」という言葉には微妙なアレルギーがある。それらは、すべての国民に関わるものであるにも関わらず、知識や見識があると、特別視される。構えがないと、口に出せない分野の言葉だと思う。日本の場合、時代の移り変わりの激しさは半端ではなかったから、世代による教育の違いが断層化していて、それが家族の問題にも影を落としている。そんな問題のひとつなのかも知れない。
憲法のお話を伺っていて、学校で勉強するときに、「憲法とは何か」ということを、「何を目的で存在しているのか」という視点ではやらなかった事を思い出した。政治について子供が考える、ということを学校側が警戒していた背景には、私たちの場合は安保闘争があった。政治に対する国民の無関心は、こうやって長い時間をかけて育成されたものだと思う。しかし、無関心を決め込んだままだととんでもないことになりそうな、きな臭い感じは今の時代、特に強まってきたように感じる。

日本を戦争できる国にするための憲法改正については、なんとなく、太平洋戦争時での英霊を美化して取り上げることで、誰かが世論作りをしている気がするのだが、気のせいだろうか。戦争でなくなった人たちに対しては、哀悼の意を尽くして尽くしすぎることはないと思う。想像を絶する苦悩を乗り越えて、国を想って、みんな死んでいったんだと思う。だけど、戦争そのものがそれで肯定されることはないはずだ。いかに、戦争の悲惨さを訴えても、それによって戦争に関わった人々が過剰に美化されたのでは、逆に浮かばれないだろう。ましてや、それを戦争を再び始める方便に使われたら。みんな、死にたくて死んだわけではないから。

これは、理想と現実のせめぎあいの話だと捉える人が多いし、理想と現実は常に現実が勝つという前提がそこにあるのだろう。しかし、未だに戦争している国で作られた戦争映画には、構図がきちんとわかるように描かれている。戦争に赴いて死ぬのは、社会で下層にある人たちで、それによって得をするのは、社会の上層にいる人たちだ、と。戦争はすべきでない、という「理想」とは、つまり、下層にある人たちの命が粗末にされることを防ぐ、堤防みたいなものなのだ。上にいる人たちは本音では戦争したいのかも知れない。簡単に崩されるわけにはいかない。その最後の堤防の憲法が、今あぶない。何とかしなきゃいけないと思う。