:『オタクはニッポンを救いますか?』 05/10/30 岡田斗司夫さん

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岡田斗司夫さん

この番組のゲストの人選も、どこまで枠を広げられるだろうか、というのが密かな興味のポイントだったのだが、お名前を見つけた途端「ここまで来たのね!」と思った。『オネアミスの翼』を見て好きだと思ったことのあるリスナーは、みんな喜んでいただろう。

ところで、私も子供の頃から今に至るまで好きな日本のアニメだけど、それが子供向けでも子供っぽくない、という点について、安保論争で優秀な学生がアニメ業界に流れたからだという考察だった。しかし、記憶している限り、安保以前の私の子供時代の特撮もアニメも子供っぽくなかった。アニメでは手塚治虫さんが中心になっていたせいだとは思うけれど、特撮の人たちが怪獣映画を作ったコンセプトは、「どうしようもなく巨大な力で踏みつぶされてしまいそうな恐さ」を描きたい、というものだったという。結局、それぞれの社会の中で、大きなものに対して屈折した思いをいだいた人たちが、メインストリームとしての「大人向け」ドラマ・物語からの「解放区」として子供向けに流れた結果ではないかと思っている。もちろん、敗戦のそれと、安保のそれとは、性質が微妙に異なるものだった。安保では、その経緯によって、国民のトップレベルに当たる頭脳がこの業界に流れたんだというのは、目からうろこだった。日本の優秀な頭脳が活かされずに堕ちていってしまった、なんて亡国論を述べる人は過去多かったけれど、結果オーライだ。

ところで、私は、「アイドルオタク」と呼ばれるカテゴリーの中にいるんだろうか。とりあえず、岡田くんの出演したドラマ・映画・舞台はすべて見た。コレクションも万全ではないけれど、かなりの量にのぼった。なにより、ホームページやブログをひらいて、勝手な感想を書き散らして、当の岡田くんから「見ないようにしている」と言われるほど、迷惑をかけているらしい。読んでくれる人があまりいないのに、迷惑メイルだけは来る。良いことないから、そろそろ潮時かな、とは思っている。握手もしてもらったことだし、もう思い残すこともあまりない。
それでも、今日も今日とて書き続けるのは、ゲストの岡田さんが言う通り、「学者としての目」なのかな、と思う。ある種の信念があって、冷たい目で見ているからだ、と。岡田くんがブレイクした以上、それももう必要ないと思う。七年か……長かったな。

しかし、「横に広がる」という言葉は、まったくその通りなので膝を打った。岡田くんを同心円の中心として、波紋のように世界が広がっていく自由さ、幸福感。……たぶん、以前、少子化の問題がここで取り上げられた時に話題にのぼったように、「お金を使わない幸せ」という点で、オタクというか、大好きなことをそれぞれが持つということが大切な時代になっていくんだと思う。それらは、「いくらでも自由に広がる」のである。

ところで、岡田くんの、オタクの人たちは制作者の目で作品を見る、とのコメントだけど、確かに私など足下にも及ばない観察眼をもっている人たち、ネットでは珍しくない。より深く楽しむために、そういうことも勉強しているんだと思うのだけど、話を聞いた限りでは、どのジャンルも底なし沼のように見える。まことにこの世界とは、認識の大海とでもいうべきものだ。日本人にしかない感性というものも、そこにあるようで、確かに、オタクはニッポンを救うのだろう、という気は強くした。