『地方分権で僕らの毎日は変わりますか?』 06/05/14 中田宏さん

私の住んでいる市の市長さんの登場だ。アナリストや国連の方はいらしたけれど、現役の政治家の方がゲストにみえるのは初めてだということもあって、かなり気張って勉強してきた感のある岡田くん。でも、市長は、とても気さくで元気な方で、岡田くんにも優しいし (ここ、ポイント高い) 貴重なお話をたくさん聞かせていただいて、リスナーとしても充実した時間だった。確かに、市長の言うとおり、政治などの堅い話を、岡田くんみたいなポジションにいる人がこうやって率先してやってくれる、というのは、非常に意義のあることだと思う。さすが政治家。システムを作るプロ中のプロ。

そのプロが言う、今まで国が担っていたものを地方に任せても、必ずできる、という言葉は、とても説得力をもって響くわけだけど、岡田くんが、「本当に大丈夫でしょうか」と口にするように、私も不安を感じざるをえない。「やらないとやる力がつかない」なんて話、何となく女性の自立の話に似ている。自立はしたいけど、やっぱり怖いことは怖い、みたいな。いや、すべての自立がそうなのかも知れない。基礎体力もなくできるわけはないけれど、何か踏み出さないといけないのかも知れない、何か、きっかけがあれば良いと思うけれど。

ところで、今横浜市に住んでいるのだけど、ここに骨を埋めようか、なんて思い始めている。娘が地元の大学に通い始めたし、地元中心に気持ちよく仕事ができているので、だんだんそんな風になってきた。
実のところ、横浜市に越してきたばかり頃は、夫の仕事の都合で来たというだけで、市民税は高いは、都心とは離れているはで、ずっと住む気なんてまったくなかった。娘が大学を出たら、都心に近いところに引っ越そう、なんて思っていた。それが、「税金が高いだけのことはある」に変わってきた。図書館やみなとみらいの存在は大きい。それから、海と公園。それと、娘の中学高校時代、いい学校と友達に恵まれた。お金がある街に住むのは、お金がかかるけど、かかるだけのことはある、という見本だ。
しかし、私たちのように、あちこち住所を移している人間には、その街に対する愛着なんて普通ないだろう。ごみの話なんて、「うっ、耳が痛い」である。こういう者ばかりだと、市政をあずかる人はやりづらいだろう。都市部にはこういう住人がとても多いと思う。その当たりを考える時の地方分権はどうなのかな、と思ったけれど、そっちまでは話が進まなかった。いつか、そんな話も聞けたらいいと思う。

ところで、岡田くんが、最近「おおきな木」の話を何度も出すようになったので、少し複雑な気持ちだ。あの絵本は、読む人がそれぞれ何を思うか、作者はまったく干渉しない姿勢をとっている。哀れな話だと思うか、与えることは素晴らしいという話だと思うか、奪える時には奪えという話だと思うか、読む人次第だ。岡田くんは与えられる人になりたい、と言う。どうかほどほどに。
「女の人を幸せにしてあげたい」なんて岡田くんが言うたび、「そうね。それと、その人から幸せにしてもらいなさいよ」なんて、いちいち言う私も間抜けなんだけど。「しあわせが、与えたつもりがめぐりめぐって」というのが、「集まって住む」ことの一番のメリットであるからして、ここの当たりがずれないようにね、と老婆心ながら。