:『オペラの楽しみ方を知りたいんです』05/10/2 加藤浩子さん

10/2
加藤浩子さん

オペラというのは、ストーリーを知っているとより楽しめる、っていうのがそもそも良いな、と思う。物語には、ストーリーを知ってしまったら、面白さが半減、ミステリーなんかだとストーリーがわかったらおしまい、なんていうのもある。ストーリーというものが、時々二次的なもので、その中に流れる、「筋」ではないもの、美しい音楽とか、美しい映像とか、それを味わうのが良いんだ、という鑑賞の仕方もある。性格的には、というか、年齢のせいか、後者が最近は合っている気がする。ただ、そういうものに限って、お値段が高いというのがあって、貧乏人としてはなかなか手が出せない。……なんて思っていたら、安く楽しむ方法をいろいろ教えていただけて、良かった。近くにオペラハウスもあるし、手ごろなのを一度見に行こうかと思う。
人によっては、楽譜を見ながら鑑賞できるなんてレベルの人もいるそうで、どんな豊かな世界がその人の脳内で広がっていることだろう、と羨ましく思う。

それにしても思うのことがある。バブルが崩壊した後、派遣業をしているある人から、これからアジアの安い人件費に、うちなんかはもっていかれてしまって、先がないんだ、なんて愚痴を聞かされた時のことだ。例によって言葉が降ってきて、熱く語ってしまった。バブルは国民全体が借金をして、「いいもの」に触れる勉強したようなもの。これは絶対に無駄じゃない。だから、アジアの人たちが、安い賃金だけを武器にして闘う別の方法が日本人にはあるし、それは一朝一夕には真似できないものなんだ、と。不思議な顔をされたけど、あれから十年、ちゃんと私が言った通りになった。日本人には、まだその蓄積が及ばない国があるけれど、ひとりひとりの中に貯えられた文化は、決して貧しくない。オペラの上映も増えたし、美術に触れる機会もバブル以前よりずっと増えた。もっともっと、これからこの分野は延びていくはずだ。なぜって、痛い借金して勉強したんだもん。当然だ。願わくば、国産の「良いもの」がこれからの時代、どんどん生み出されていくように。あともうちょっとだな、と思う。日本人の声楽家のオペラ、聞いてみたい。そして、日本製のオペラを。

この番組、その文化の部分の担い手の人たちから、面白い話がいっぱい聞けるところが好きだ。ナビが、これからの時代を背負って立つ俳優の岡田くんだという理由が大きいだろうけど、それにしても、みなさん生き生きと話してくださるので、ますます日曜の夜が楽しみになってきた。