『人口が少なくなるとどうなるんですか』05/9/25 松谷明彦さん

9/25
松谷明彦さん

日本では少子化の問題が叫ばれているけれど、一方で人口が増え過ぎて困っている国もあって、二人めの子供を産むと重税を課せられる、なんてお隣の国では、いろいろ悲惨な事件もあるようで。そろそろ、地球も人口的には限界だと思うし、日本だけの中で「少子化を何とかして子供を増やさなくては」みたいな世論を作ることに対しては、私としては疑問を感じている。経済が縮小してしまうから、女たちよ子供を作れ、なんて、富国強兵政策みたいで、アレルギー症状を起こしそうだ。自分が産む子には、幸せな人生を歩んで欲しい。それがどうやら怪しいらしい、と広まれば、当然生みたがらない人は増えるだろう。

ところで、最近、電車内のアナウンスで、妊娠している女性や小さな子供を連れたお母さんに席をお譲り下さい、というのが流れる。とてもいいことかも知れないけど、流産の危険性が一番高い妊娠初期の人は、見た目にまったくわからないから、もうちょっといろいろ工夫をしてあげないと、守ってあげられないかな、なんて心配している。
お腹にいる時からその子の人格形成ははじまっている、とも言うから、人から親切にされる体験をちゃんと積んで、優しい子に育っておくれ、という気持ちを込めて、「次降りるから」風なクールを装って席をかわる。しかし、こうした、妊娠出産子育てに絡んだ女性に対するケアというのは、自分が体験したからはじめて知ったことだ。つまり、常識になっていない、ということだ。
古いテレビドラマで、妊婦がいきなり苦しみ出して、ずっと苦しんだまま出産する、という、パターン化した嘘八百を放映してきて、出産恐怖症になった女性が増えたという。痛みの暗示は、出産をますます困難にして「もうこりごりだ」という人を増やす。母親という立派な経験者が身近にいるのに、どうい風に出産が進むか、きちんと娘に教える母親が少ないということでもある。つまり、この国では子供を産むことは「おんなのやること」に過ぎないので、「たいしたことではない」……そう受け止められているのだと思う。母親を無闇に仮想敵にするドラマもたくさんあるし、私にはどうしても日本人が少子化……滅びの道を積極的に望んでいるとか思えない。つまりは、自分が生まれてきたことに意味を見出せない人が大多数を占めているからだと思うが、それは競争が強化された社会なのだから、仕方がない。

何だか、この話になると、つい熱くなってしまうけれど、「少子化たいへんだ」みたいな話を、男性が中心になって騒ぐと、事態は最悪の形になっていくと思うので、老婆心から。お金じゃなくて時間……そう主張される先生に、諸手をあげて賛成だ。