ドラマ「DCU」〜治安維持と殉職について

また遅くなりました。

「DCU」の第3話。2話までの流れで、「アンナチュラル 」的な、1話完結のミステリーなんだと思い込んでいました。そこに思い切り不意打ちのパンチを食らった感じです。

それ以前に、捜査から外された隆子さんに瀬能くんがコーヒーを差し入れて、「このコーヒー大好きなの」「知ってます」なんて甘酸っぱい会話してたじゃないですか。「I love you!」「I know 」なんていうスターウォーズ的なアレで2人が恋仲になるんだと期待しちゃったじゃないですか。死亡フラグだったんですか?ひどい。

船内で倒れているであろう隆子さんが、瀬能くんが駆け寄って脈を確認することも、蘇生術を試みることも思いつかないほど、決定的に死んでると一目でわかる状態って? 瀬能くんの驚愕からの慟哭がすごくて、見えないその隆子さんの姿を、見てしまった気がしました。

とりあえず、シンプルな謎解きミステリーではない、という宣言を受けたようなもの。一週お休みを置いて、新しい展開がスタートするのもこちらの心の状態を整えるのに良いタイミングです。

ところで、ロケ地にみなとみらいの海保の施設が時々使われていますね。馴染みのある風景なのが良い感じです。その海保の施設群の内、うちからそう遠くないところに資料館があって、中に北朝鮮の船が展示してあります。銃撃戦の跡も生々しく、海上保安の仕事が、携わる人の生命のリスクを伴っている現実を突きつけられます。

警察や自衛隊の人道的な部分、例えば事件時の迅速な対応や、災害時の目覚ましい活躍など、「いてくれて本当にありがたい」と思うことはたくさんあります。ですが、国防や治安維持の見えない部分に光が当てられることはなかなか機会としてありません。海保もしかり。戦争アレルギーが完全に国民から消えていないせいでしょうか。日本は治安の良さが飛び抜けていますが、それはたぶん当たり前ではないし、日本の昨今の衰退を思えば、悪化していく未来もあり得ます。国民が意識の変革に迫られている、そんな時期なんだと思います。

以前、江戸城=皇居の見学に訪れた時、田安門を入ってすぐにひっそりと狛犬が並んでいるのを見つけました。彌生慰霊堂です。警察や消防の殉職者を祀ってあるところです。会ったこともない、顔も名前も知らない方達ですから、二人称の死ではありません。でも純粋に三人称の死として心の中で処理できないものを感じました。公務で命を落とされた方に向ける、強い敬意と感謝と哀悼の意は、誰に教えられたわけでもない自然な感情のようです。リスクの高い仕事だって事を普段忘れがちでした。本当は、誰にも死なないで欲しいのですが。

周りを海で囲まれた島国の日本では、国境は海の上です。あまり意識して来なかったのですが。海上保安庁は、それを護ってるんですね。海難救助ばかりクローズアップされがちですが、こちらも認識が新たになりました。

今まで、ドラマ等ではなかなか描き辛かったテロとの戦い等も、段々と描かれるようになりました。はっきりとした悪意で不特定多数を狙う犯罪は、普通に生きていると想像しにくいものです。でもたぶん、それは架空の話ではなくなったんですね。パンデミックで世界中が逼迫しているご時世です。公務に携わる方の負うリスクも重くなっていくでしょう。その点に関しては国民の理解は必須だと思います。「DCU」もその点をしっかり描いていかれるようです。それ自体、とてもチャレンジングな事だと思います。

そう思うと、「DCU」の物語で命を落とした人たちは、それぞれの大切な物を守る為に亡くなって、でもギリギリまで執念で証拠を残している共通点があることに気がつきました。一話目と三話目の死者に、同じ言葉がかけられるのも象徴的です。「よく頑張ったな」。

次回は、隆子さんを殺害した犯人を突き止める捜査になるようです。どうなるのか、予想もつきません。待ち遠しいことです。

 

それから、来週はいよいよ「嘘喰い」の公開となります。横浜さん佐野さんは既に続編の夢も語られていますね。相当な自信作とみました。楽しみです。

 

では