ドラマ「#着飾る恋」第8話

さて、駿くんが本気を出してきました。水の如く流れるままに、の主義をかなぐり捨てて仕事に没頭し出しました。水は水でも、ほとばしってしまう方ってこと? 太陽は、その光を享受してくれる存在がいなければ虚しい、とニーチェも言ってました。駿くんは誰もが認めた才能があるんだから、それを思い切り出せるのが、やっぱり人としての幸せの基礎だと思います。料理の手際が素晴らしい。

その意味で、恋のライバルとしての葉山さんはいい仕事をしたんだと思います。16歳も年上の恋のライバルに対して経済力もないくせに「すっこんでろ、俺んだよ」発言をしていたピンク髪の高校生は、26歳になって今度は14歳上の大人の男性に正しく対抗心燃やしている、という図ですか(違)。良いです。とてもいい顔してます。私もこんな真っ直ぐでひたむきな駿くんの方が好き。横浜流星さんは、この真剣な表情が本当に美しいですね。

そうそう、香子さんが駿くんに初めて会ったレストランのシーンで、素人ながら、新進気鋭のシェフのお店としては、これはまずいなと思いました。規模が大き過ぎるから複数の料理人を置かないと成り立たないし、メニューの高級感からしていってコストを下げるか単価を上げるかしないと利益を上げられないのでは、と。オーナーは、駿くんの腕に惚れ込んで、敢えてリスクをとって難しい場に放り込んだのでしょうか。そうだとしたら、裏切られた怒りは相当なものでしょう。

移転したお店は、それらをすべてクリアしています。駿くんも葉菜さんも経験値が高くなっています。今度こそ頑張って欲しいと思います。

ただ、言葉足らずなんですね、駿くんは。と言うか、恋愛物語の登場人物は。恋に障害のなくなった現代において最後まで残る高い壁がこれかも知れません。駿くんが元カノに語る「隣にいる資格」の話、頑張る理由の話、真っ先に真柴さんにしないと。ドラマ「吾輩は主婦である」に良い台詞がありました。「思ってて言わないのと、思っていないのとは、相手にしてみれば同じことなんだ」と。これに尽きます。失いたくないなら、気持ちは言葉で伝え続けないと。「言わなくてもわかるでしょ」は不和の元です。その意味ではるちゃん羽瀬さんグッジョブ。

お互いを思い合いながら気持ちがすれ違っていく2人に胸を締め付けられるし、それを何とか励まそうとする香子さんや葉山さんの大人の対応がより救いに感じられました。何もかも投げ打って打ち込まないといけない時期がある、ですか。私は28の時でした。当時の旦那がイラついて「俺と仕事とどっちが大事なんだよ」と地雷を踏んだので「仕事」と答えました。後悔はしてません。

「知ろうとする努力」ですか。さすが香子さん。人と共に生きていく大切な知恵です。羽瀬さんがその言葉に反応して変わり始めています。でも、それもお互いがその努力をしてこそです。相手を知るスキルには、信じられないほどの格差があるのがカップルの破綻の理由かと。真柴さんは生来「作る人」ではないので、困難さを感じるかもですが、乗り越えたら仕事人としてのレベルも上がる事確実なので、頑張って欲しいと思うのです。

その点で、元カノがレストランのマネジメントにおいて、非常に優秀な人だと分かって、駿くんを見直しました。同じ分野の人で仕事人として信頼できる女性を好きになったわけですね。

真柴さんを仕事人として高く評価するまでになったのも、1話から見れば隔世の感があるし、評価が高まるのと好きな気持ちが高まるのと同期しているのが、駿くんの素晴らしいところだと感じます。

葉山さんと駿くん、共通して真柴さんの仕事への評価が高い上で恋をしているところが、好ましい感じがしますが、これはドラマ的な特異な設定なのでしょうか、それとも今どきの傾向なのでしょうか。

駿くんの恋のライバルに対しての焦りは、その感性の反射かも知れません。女性同士なら、若いだけで有利な場面もありますが、男性の場合真の実力競争です。ぼーっと生きてきたオジサンならまだしも、葉山さんは実力も人間力も超一流の大人の男性です。そう、涼しげな佇まいの中に熱い情熱を秘めた最上級の男性であり、強敵中の強敵です。私が駿くんの立場に置かれたら勝てる気がしません。真柴さんからいくら「藤野さんだよ」と言われても、逃げて捨てての過去を思えば自信なんて持ちようがないからです。

達観していたかに見えた駿くんですが、やるだけやり切った上での達観じゃなくて、逃げてた自覚はあったんですね。それを知って今までの「無理をしない」発言の数々を振り返ると、昭和スポコン世代のオバサンはイラッとします。

恋愛感情には理屈じゃない面もあって、相手のスペックがどうあれ、好きなものは好きだし、好きじゃないものは好きじゃないわけです。

真柴さんの駿くんへの「後悔をすてたら?」と言うのは的確な助言だと思います。これが言えるまでに2人の絆は深まっているのだから、どうか良き未来を。

そう思ってたら、切なさマックスのラストシーン。真柴さんを目指して、2人の男性が走る走る。駿くんは必死に見えるけど、葉山さんは恋を始めたばかりの喜びに満ちているように見えます。駿くんが初めて「くるみ」と呼んだ瞬間、真柴さんが気づいた気がして、奇跡が起こるんだと思ったのに。現実が厳しいのと同じくらい厳しいですわ。でも、それまでの経緯を見たら、それは必然的な結果で、それは駿くんの性格、選んだ事の結果でもありました。日常的に戦略を立てずにいられないINTJとしては、もどかしい限りです。

次回はさらに切ないようです。待ち遠しいような、見るのが怖いような。

今日はここまで

では