映画「前科者」見ました

昨夜、映画「前科者」見てきました。

そして今朝、録画しておいた森田剛さんゲストの「A-Studio+」を拝見しました。長年のV6ファンとしましては、望む限りのベストの状況に今置かせていただいているんだな、と感じ入りました。事務所も推しも何か隠したがっている、わだかまりがある気がする、なんて雰囲気が一番ファンにとって辛いことです。それがなくて、素直に推し活を続けられる今を喜ぼうと思います。

ただ、奥様の事を語られるのは、事務所を退所しないとできない事だと思うので、いまだにそれができない人たちの事を思って感慨深く拝聴しました。奥様がご自身と「似ているところもある」というのは客観的には、お二人とも言葉の魔術師なのがそのひとつです。さり気なくすごく面白いことを言われるのですよね。そんなところがとても好きで、リアルで密かにお二人の語録をパクってあたかも自分が思いついたような顔をしていた事がありました。懺悔します。

そんな人柄が魅力的な森田剛さんですが、前作「ヒメアノ〜ル」の殺人鬼ながら色気がダダ漏れていた主人公とは正反対の、言葉少なく友だちも恋人も作らずひっそり生きている男性を、とてもリアルに演じられていました。笑顔がひとつもないと別人の感があります。でも、笑う事もできない壮絶な過去もわかってくると、精彩を欠いて見えた人に気持ちが寄っていくようです。連続殺人事件を捜査している刑事たちも、段々と前科者である彼に気持ちが寄って、感情を揺らされていくようです。

保護監察官が保護司の阿川さんに、殺人は他の犯罪に比べて再犯率が低いと語っていました。以前書いた裁判員体験の時の強制わいせつ犯は、前科五犯で、つごう12年の懲役の出所後、半年足らずで2つの事件を起こしていました。再犯率の高い性犯罪、窃盗、薬物使用は、こうやって見ると慢性病に似ています。殺人はそうではない、という事ですね。

森田さん演じる工藤誠が殺人を犯したのは、パワハラの酷い先輩が、亡くなった母親を侮辱したのに発作的に反応して、との事でした。その時の様子を元同僚が描写しているのを、脳内に描いてみて、身につまされました。私も同じ事があったからです。10歳の時。学校では常にいじめられっ子ポジションだったのですが、いつもスルーしていたのを、ある日父親を侮辱されて、そばにあった物を掴んで相手を叩きのめしたのでした。周囲の証言によると無表情で、非常に的確な攻撃だったそうです。主観的には、頭の中がシーンとして記憶が曖昧です。幸いだったのはそこが音楽室で、咄嗟に掴んだ武器が鍵盤ハーモニカだった為、大事に到らなかったことです。包丁がある調理実習室、ノコギリや金槌のある工作室だったら、人生詰んでいたことでしょう。本当に。決定的な罪を犯さずに生きてこれたのは、運が良かった。それだけだと思います。

愛する者だけが唯一の逆鱗って人、そんなに少なくないと思うのですが、どうして「相手が誰であれ、その関係者を侮辱しちゃダメ」なる知恵は未だに社会に浸透しないのでしょう。工藤青年、本当にいつもいつも不遇で、それでも頑張り続けて母親思い、弟思いで、大変でしたね。運が悪過ぎて、私などは罪悪感をおぼえてしまいます。

でも、思うのですが、自分の職務を怠る警官や福祉職員は、基本「他人事」なので「問題ないだろう」なる正常性バイアスの元にそうしてしまったのは分かります。でも、子供だった工藤兄弟をずっと虐待してきた父親・養育施設の職員、後輩の工藤青年に過激な暴力を振るった工員は、理解できません。こちらの病理を知りたいと思います。

追い詰められた者にとっては、前者も後者も、共に敵でしょう。私の知人で、酷いDVにあい続けながら子供の高校進学を機にやっと脱出した女性がいます。なかなか逃げられずにいた理由のひとつ。DVで怪我をして幼児2人を抱えて交番に逃げ込んだ時、家に帰るように諭された上、「旦那さんの夜の相手、ちゃんとしてあげてる?」と言われたそうです。聡明だけどまだ若くて素直だったその女性は「ああ自分がいけなかったんだ」と思ってしまったのだそうです。やがて、その警官がDV夫に並ぶ憎悪の対象となっていったのは、言うまでもありません。20年前の話ですけど。被害者の気持ちに寄り添うのは、恵まれた人には難しいと言います。これ、論文もあるそうです。政治家や官僚、公務員は概して一定水準超えた家庭の出身者が多いので、悩ましいところです。

ともかく、加害・被害問わず、円滑でない人間関係の、その心にダイブするのは困難かつ苦痛であるようです。たくさんの人をいっぺんに相手にするのは無理でしょう。そこで、地域に密着した保護司が犯罪者の更生に付き添い、再犯率を低め、治安に貢献する体制をとるわけですが・・・これが、日本独特のシステムなのをついさっき初めて知りました。20代の保護司が10数名しかいない事も。

強い動機を持って、20代女性の保護司となった有村架純さん演じる阿川さんが、荒野の夜に光る北極星に見えます。揺るがないでそこにいる救い、という意味で。真っ直ぐな瞳や、大き過ぎない表情と落ち着いた声が、安心させてもくれます。でも、いざという時には最大級に熱い。最後ぐしゃぐしゃの顔で泣く工藤さんにもらい泣きしてしまいました。

関係組織には、年々減少をたどる保護司が、この映画をきっかけに増えてくれる期待があると言います。でも、修道士のボランティアだった看護を、ナイチンゲールが職業にシステム化したように、職業としての保護司を成立させる道を目指すのが、個人的には最善の策だと思うのです。

とりとめなく書きました。いろいろな事を考えました。重いけど、暖かい物語ですね。

森田剛さん、次回作待ってます。

では