エッセイ>参入障壁の話

V6の完結まであと1ヶ月とちょっとになりました。推しの新作の公開がこれからラッシュになるので、それなりに充実した日々を送ってはいるのですが、ソワソワした気持ちにはなります。遠足・・・じゃなくて、卒業式を控えている時の気持ちに似ています。「その後」がどんな風になっていくか、まだ分からないので、ワクワクもありつつ。そんな毎日です。

 

さて、前回にV6のファン活動に絡めて「参入障壁」なる言葉が浮かんだせいで、色々なことを考えました。トリガーワードとしては、なかなか秀逸なものがあります。制度的な物できっぱり壁ができているだけではなくて、知らず知らずに入りにくくなっている、圧のような物の場合もあります。

以前、高校の剣道部で男子部員が女子部員に稽古を逸脱した暴力を振るって、追い出しを計った経験談を書きました。男子全員がそうだったわけではありませんが、そんな人が一割もいて、止める人もいなければ同じこと。これなどは、参入障壁としてとても分かり易い事例かと思います。女子と男子の体格差・体力差が広がる高校生で男女混合の稽古に無理があったから起こったことですが、それは住み分けという自然な形で大人らしい解決ができたはずです。現に、子供から高齢者まで年齢性別様々な人を受け入れている町道場では、それができていました。

これは、男性が女性を構造的に差別している図式の話ですが、伝統的に女性の仕事とされている職場に、男性が参入し始めたばかりの頃、男女逆転の摩擦があったとも聞きます。工学部の私たちは女子トイレの少なさに困りましたが、男子トイレの少なさに困った人もいたのですね。

性質の均一なコミュニティがあって、そこに異質な少数の者が入って来ると、マジョリティ側に意識的にか無意識か、異分子を排除する動きが出る、ということでしょうか。マジョリティは、参入して来る新しいメンバーの性質を最大公約数的に「設定」します。それから外れた者は生き辛くなります。これが障壁の根っこかと思います。

「設定」と言えば、コミックでは、恋愛物より、未知の世界のお話の方が昔から好きです。冒険物、社会派物、職業物、SFなどなど。ところが、時々、男性誌に気持ち悪い女性観が現れているのがあって困ります。ポルノ主題でもないのに、女性のヌードや即物的な性描写が描かれていると、うんざりします。これなんか読者を男性のみに設定して自然にできた「女よけ」の結界なんだろうな、と思います。「ゴルゴ13」とか、世界情勢がよくわかる格好の教材なのに、本当に勘弁して、と思いましたもん。見たい物を見る為には「仏の心」「虫の心」になって、淡々と読むしかありません。

「子供向け」「少女向け」には、また違った障壁があることは、前回と「怪獣倶楽部」の感想で書いた通り。設定対象外はみんなそう。

そう言えば、「本当は怖い○○○」というタイトルに代表される、テキスト考察の書籍がいくつもありますが、それまで可視化されなかった事を科学的な手法であぶり出していく面白さが好きで、よく読みます。シンデレラが、中世ヨーロッパの、戦争や疫病で大量に孤児が現れた社会事情を背景にしているとか、名前が出てくるお伽話は実話が元になっているとか、カルチャーショック。最近のでは、大ヒット作「鬼滅の刃」の鬼の名前が病気の名前を元にしているとか、面白いなあ、と感心します。科学的な目を持って「○○向け」に入り込むと、こんなに面白いというお話です。

ひとたび、参入障壁を超えてみると、ストレスを感じることも多々ありますが、入ってみないと知り得なかった面白いものがたくさん見えます。行きたいところへ行き、見たい物を見て、やりたい事をやる。障壁は戦略を持って越える。そんな人生を全うしたいと願う由縁です。

コロナ禍が巨大な障壁となり、日に日に深刻さを増して、感染死・経済的死すら身近となった昨今ですが、だからこそ、人の心だけが生み出している無形の障壁は、ひとつひとつ無くしていこうじゃないか、という提案です。

今日も、すべての人の幸せな人生を祈って。

では