物語考>いまさら「#はじこい」

ちょっと前になりますが、ドラマ「初めて恋をした日に読む話」、全部見ました。コミックも、娘が電子データで持っていたので全部読みました。時期的に国公立の受験シーズンなので、タイムリーでもあります。そう、もう2年も前になるんですね。深田恭子さんも横浜流星さんも、歳の差を感じさせない可愛いカップルでした。

歳の差カップルの物語では、年上女性のキャラは「大人の女性」が定番かと思っていました。この物語では、時々高校生にイニシアチブをとられるほどに、無垢なままで歳を重ねた女性、ということで春見順子役は深田さんが本当にぴったりでした。お互いに与える物がある関係というのは、とても良いです。それが歳の差だからなおさら。

名高いピンクの髪は、なるほどインパクト大きかったけど、見ている内にだんだん馴染んで来て、むしろ上品に見えて来るからマジックです。お陰で街で綺麗なピンク髪の子を見かけるたび、「無敵ピンク」と独り言を呟いてしまう病気にかかっています。

そう言えば、今からだと信じがたいことですが、かつて茶髪が不良のシンボルだった時代もありました。だから、ピンク髪も普通に社会に馴染む日が来る可能性があると思います。横浜さんの魅力がそれに大いに貢献することでしょう。時代はどんどん移り変わって行く、と。でも、おそらく東大の難易度はこの先、時代が変わっても変化がない気がします。

現時点での東大生のIQ値は平均で120だそうです。必ずしも人口のIQのトップが集まっている訳ではないことを表しています。東大が求めている学力は、知能テストで測れること以外にも沢山ある、というのはドラマ以上にコミックに詳しく説明されていました。頭の柔らかい時期に自分の頭をどうやって育てていくか、それが全てなんですね。

そして、現行の日本の社会システムは、そこで人間が、人生が、仕分けされて階層が固定してしまう絶望のシステムでもある、と。物語の根っこはそこでした。恋の部分をさっ引いても、かなり強いメッセージ性を感じます。

4人兄弟の内、親から勉強や成績をネタに殴られるのが成績の良い順というヘビーな家に生まれ育ったので、主人公の春見順子や由利匡平に感情移入しつつも、どこか引っかかるものを感じていました。ひとりっ子なら、絶えず比較されて勉強で頭のおかしくなった兄弟から洒落にならない暴力暴言にさらされて来ないだけ、マシじゃない、と。でも、最後まで見て、親の注意が自分ひとりに集中するのもなかなかにシビアだと思い直しました。その親の気持ちも理解できるだけに、受験を巡る家族関係って何でこんなに切ないんだろう、と心が沈みました。

そんな中、メンターたる年上の女性に恋して、それを原動力に頑張り抜く高校生の匡平くん。春見先生は、本質主義トークが多くて、本人も意図せず他人の目から鱗をはたき落としてくる変わった人ではあります。匡平くんは地頭が良いからこそ親に反抗もしていたけど、春見先生の価値も分かった、ということ。匡平くんが好きになるのは自然だったのでしょう。よく分かります。でも、その気持ちは将来的には消えます。人間とて生物なので。匡平くんは若過ぎてそれが分からないし、春見先生はその辛さまで想像できるほど分かってるから、躊躇します。ドラマではハッピーエンドでしたが、春見先生の「いつか来る別れ」への覚悟は、たぶん匡平くんには最後までわからないでしょう。これは一般論ではなくて実感です。

人間、何を選択しても「やったこと」の後悔より、「やらなかったこと」の後悔の方が大きい、とよく言われます。1日1日を大切に、大切な人と少しでも長く一緒にいられるといいね、と物語のカップルに語りかけて視聴を終えました。また見たくなるドラマでした。

 

今日はここまで。

では