『情熱大陸』の続き

ずいぶん前から気になっているんだけど、蜷川さんが、もう後がないとか、年をとって良い演出家はいないから今のうちにとか、言うたびに、私は自分が微妙な年齢にあるせいか、複雑な気持ちになる。
平均寿命より若いからといって、残り時間が約束されている人はいなくて、それも標準偏差の内にある……それを普段、できるだけ忘れようとしている人間がこの国にはたくさんいるだろうから、たくさん反感を買うかも知れない。
余計なこととは思いつつはらはらしてしまう。
私などは、どちらかというとあおられて、普段感じていたことがますます強化され、「今の内にやっとこう」「生きている間に……」「死ぬ前に……」というのが口癖になってしまった。
それは、蜷川さんひとりの影響というわけではないけど、やっぱり一番強烈だ。
もともとせっかちなのに、ますます磨きがかかってしまった。
結果的にそれはとてもいいことだ。
このごろそう思う。

その蜷川さんが、『情熱大陸』のインタビューの中で、藤原さんを見届けられないのを悔しがって、その時にはもう(自分は)いない、と言う。
また、人が無意識の故意に忘れていることを、わざわざ。
見たくて見たくてたまらないものがあるのに、それがきっと見られない、なんて想像。
こんな悲しいこと、ない。
悲しいことを想像しなきゃ、悲しむことはほんの一割くらいに減るんじゃないかと時々思う。
私も、贅沢は言わないから、あとせめて14年。藤原さんが40歳になるまで絶対に生きていたい。
その時の舞台がどうしても見たい。
もっと健康管理しないと。後になって「しまった」と言ったって遅いから。

しかし、希望がないわけでもない。
あと10年後、つまり30歳になった頃には、蜷川さんと一緒にシェークスピアをやりたい、と語らっていた、20歳の藤原さん。
それは、9年も前倒しになった。
しかもハムレット
この調子で、がんがん前倒しにできれば、
ちょっとしたタイムマシンにでも乗れた気分になれる。

まずは『ムサシ』。
今頃、製作者、出演者のみなさんは、どう過ごしておられるだろう。