『蟲師』

蒼井優さんが、先週のアエラの表紙になっていた。笑顔も素敵だけど、こんなふわっとした表情もまた愛らしくていい。何だか、見るたびに美しくなっていくようだ。「のっている」というのは、そういうことなのだろう。もうしばらく、いい風が吹きますように。それにしても、こんなに若い女優さんが表紙になるのは滅多にないことではないだろうか。また解説が素晴らしい。「日本の少女の純粋さと透明感を全部集めると蒼井優になる」という部分はまったく同感だ。さてさて、そんな、純粋で一生懸命な少女がいつもはまる蒼井優さんが、「蟲」を体に侵食されつつ文字で封じる、淡幽という少女を演じる。話題作「蟲師」初日で見てきた。

今回は、「見てから読む」ことにして、見終わってから原作のコミックをヤフーコミックで読んだ。それで感じたこと。「読んでから見る」方が、ひょっとして良かったかも知れない。娘は、「読まないまま見に行かない方がいい」と言う。そこまではっきり言うと角が……(笑) コミックの方は、一話読みきり形式なので、それぞれのエピソードの登場人物には、主人公のギンコ以外に繋がりがなく、それを二時間の流れの映画で見るよりは、コミックの方が世界観を受け止めるのに楽だ。その上で、映像美を楽しむ方が良かったかも知れない。日本の明治時代の、近代化が進みつつある都市部とはうってかわって、原始の自然を各所にそのまま残している山野部の描写。この蟲たちもやがて電気が作り出す人工の光に追い立てられて、日本から姿を消してしまうのだろう。そんな映像を生み出すために、ロケハンを徹底して行ったそうだが、その甲斐あって、山の肌に霧がもやもやと漂っているオープニングにはじまる映像は,息をのむほど素晴らしい。あと、衣装も小道具も建物も、懐かしい感じがいっぱいで、とても良かったと思う。全部手作りだった時代の空気が画面に満ちていた。

あと、役者が本当に良かった。蒼井優さんは本当にぴったりの役だ。はかなげで、それでいて凛として。「淡幽はいつだって一生懸命だ」なんてギンコの台詞には、「まったくだ」と心の中で返事した。
大森南朋さんは、『タイガー&ドラゴン』や『それでもボクはやってない』で気になっていたのだけど、虹を捕まえに五年間旅している人、というのが私のツボに入る。

ただ、映画を見ていて残念に思ったことがひとつある。過去の出来事と現在進行形の出来事が、それと区別できないような構成で進んでいたことだ。後になって謎解きのように「そういうことか」となるわけだけど、それまでは頭の中が「?」でいっぱいになる。その謎解きがメインテーマだったら別だが、「蟲」という平素まったくなじみのないものについての謎だから、しばらく見ていると心が疲労してくる。これが残念だった。それと、できれば非日常の要素については、物語の早い内にすべてカードを曝してもらった方が、後々混乱しなくて済む。「実は」なんていうのは、何でもありの世界ではむしろ面白さを損ないがちだからだ。

今回はちょっと辛口だったかも。思いっきり期待していったせいだと思う。