本の大人買い

昨年の暮れに、日垣隆著『すぐに稼げる文章術』の中にリストアップされていた、必読の33冊をアマゾンで大人買いした。それにしても、この本のタイトル、買うのにとても恥ずかしい。これに決めた編集者のセンスを恨む。帯の言葉も中身と正反対だ。ネットであらかじめおおよその内容を知らなかったらスルーしていたところである。
それはさておき、この手のブックリストを掲げた書物には今まで何度か出会ったけれど、今回はじめて全部注文してみよう、という気になった。それというのも、著者が膨大な量の本を読む人であるからだ。私は読むのが好きな割りに遅くて、仕事のある日には3日で一冊がせいぜいだ。お酒が好きなくせに弱いのと同じで、好きな分だけもどかしい。大量に読める人の目から見た「必読書」という点に大いに興味をひかれ、自分自身も早く読む修行になるかも、と思ったのである。
さて、読み出して一ヶ月が過ぎた。その間に読んだ本は

「ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法」福田和也著 PHP文庫
「まだ見ぬ書き手へ」丸山健二著 朝日新聞社
「知的ストレッチ入門」日垣隆著 大和書房
「売文生活」日垣隆著 ちくま新書
ウェブ進化論梅田望夫著 ちくま新書
「執筆論」谷沢永一著 東洋経済新報社
   リスト外として
「2週間で小説を書く!」清水良典著 GS幻冬舎新書
 ずっと同じテーマの本を読んでいるせいで、それまで考えたこともなかったことを、何となく考えたりもしている。出版業界の抱えている厳しさと、その理由がだんだんと見えてきた。印税と出版数を出して、その上で計算すると、確かに書くことで食べていくのはとても難しいのだということが具体的にわかった。部外者にはなかなか理解しづらい世界である。同じ業界に、極端に「売れるひと」と「売れないひと」がいる、ってことの理屈もだいたいわかってきた。それと、昨今のネットワークの発達によって、文字文化が劇的な変化を遂げそうな予感も。

しかし、この読書ペースだと、全部読むのにあと三ヶ月かかりそうだ。せめて、今の二倍のスピードが欲しい。

とろこで、今日、この読書の中で特に興味を持った谷沢永一氏の有名な書評集「紙つぶて」を借りに数ヶ月ぶりに図書館に行ってきた。すると、いつになく図書館が混雑している。若い人も年配の人も、両方とも明らかに増えている。すべての席が人で埋まっていた。それでも、図書館のあの「いい感じ」はそのままだ。活字離れが叫ばれているというけれど、本当だろうか。ブログの発達も世界有数であるそうだし、日本人の文字文化は、いい方向に進んでいっているんじゃないか、と感じた。