『フラガール』

前評判通りの映画だった。
目当ては、蒼井優さんだったのだけど、松雪泰子さんの気風のいいダンスの先生が思った以上によかった。スポ根の鬼コーチみたいで。過去をあまり語らないのに、何となく想像できる過去が伝わってくる、というのがいい。
そして、気が強くて怒りんぼなんだけど、本気で怒るツボが、全部人のためだというところに後になって気がついて、ぐっときてしまった。泣いちゃうツボも人のためだ。
最後近く、世話役さんがぽつんと「いい女になりましたね」と言うのだが、同感だ、と思った。
で、蒼井優さんはもちろん良かった。テレビの『情熱大陸』で、映画作りの奮闘記が描かれていた。
フラダンスという重要な課題がある、大変な役だった。ダンスに気をとられると、その役の人間の感情を表現できない、という点でずいぶん悩んでいたみたいだけど、その甲斐あって、会心のダンスと演技。私も思わず劇中の観客と一緒になってスタンディングオベーションしたくなってしまった。

しかし、語られている世界は、世界や日本がどんどん変化のスピードを速めることによって、常に貧しい者にしわ寄せが来る、という重い現実だ。どこもかしこも暗くて、華も光もないシーンの連続の中で、いきなりカラフルな服を着たまどか先生がやってくシーンなどは、まさしくウエスタンだ。まどか先生が火種になって、周りがかわっていく。まどか先生もそれによって変わって行く。椰子の木をからさないためのストーブを街の人々がリヤカーで集めるシーンなどは、とても象徴的だと思った。

そんな中で、フラガールの女性たちが、誰かのおどけた声に一斉に笑うシーンが、個人的にとても好きだった。この美しい笑顔。これが女の人の持っている力なんだな、と思った。
そして、圧巻のフラダンスシーン。DVDが出たらリピートすることは間違いない。
でも思う。楽しいと感じることは、長らく、罪悪だったのだな、と。私も覚えかある。
こういう力が、本当に正しく力となる社会が、正しい方向だとも思う。