『ハチミツとクローバー』

見てきた。
甘酸っぱかった。
お目当ては、はぐみ役の蒼井優さんと、竹本役の桜井くんなのだが、
これがまた、はまり役というか何と言うか。
美大というところは、もともとアートの能力がある人間が行くところだから、
人間の割合としては少数派のたまり場だ。しかし、その中でもオンリーワンとでも言うべき
特異な、愛すべきキャラクター。
それが少しも嘘っぽくない。
周囲の人間に遠巻きにされてしまう絵の天才少女、はぐみ。周囲の人間が、決して近寄らないのに、
いつも「見張って」いて、話題にする。うーん、思い当たる人間、何人かいるなあ。
普通の人とは違う、とてもピュアで鋭い感性を持った壊れそうな少女、
これを蒼井優さんが好演していて、
娘と二人で何度も悲鳴をこらえるほど愛らしかった。
ああ、もうなんて素敵なコなんだろう!
そのはぐみを一目見て、恋に落ちてしまう竹本。うんうん、お母さんもわかるぞぉ。
「人が、恋に落ちる瞬間を、生まれてはじめて目撃した」と真山に言わしめる、桜井君の演技は必見。
木更津キャッツアイ」の頃に、「感情がきれいに表情に出る、いい顔した役者」と評したけれど、
それにますます磨きがかかったようだ。

お話としては、五人それぞれの片思いが描かれる、というもの。
それが美大という特殊空間の中で、瑞々しく描かれていく。
評判にたがわず、さわやかな余韻の残る、久々の良質の青春映画だったと思う。