『ゲド戦記』二度目見てきました

ゲド戦記』二回目見てきた。二度目が一度目よりいい。監督は、今、アメリカで原作者のル・グインにフィルムを見せているところだ、もし、いい反応がなかったとしても、必ずいい実りを結ぶから、と、祈るような気持ちでいる。

ところで、原作ファンから評判が悪いファンタジー映画ということで、『ネバー・エンディング・ストーリー』を即差に思い出した。原作『はてしない物語』の作者エンデが、原作とあまりにイメージが違いすぎると訴訟を起こし、敗訴したため、映画に自分の名前をクレジットさせなかった。TV予告にも使われた、超絶美少女の女王様や、美少年の主人公などは、原作の主旨から完全にかけ離れている。確かに映像だと楽しいし、おかげで映画の興行では成功したけれど、作者としては面白くないだろう。
ところが、映画をきっかけに原作を読んで感動した、全世界の子供たち大人たちから熱いファンレターが届き、それでエンデも、二作目には名前をクレジットさせた上、公の場にも出て宣伝に一役買ったのだとか。
それで思った。ペーターゼン監督のことだから、原作ファンはもとより、ファンタジー好きが席を蹴って怒り出すエンディングなどは、絶対、確信犯的トラップだ。首を賭けてもいい。原作ファンが怒りまくってあちこちで本のすばらしさを熱く語るから、「ほう、そんなすごい本なのか」と読んでみて、はまりまくった人間がここにひとりいる。すべては仕組まれていたのではないだろうか。「物語(脳内世界)と現実は、表裏の関係にある」原作を大幅に変えても、映画はこの大切なテーマだけはがっちり押さえていた、そういえば。

さてさて、『ゲド戦記』の読者が、これをきっかけに全世界で一桁、うまく行けば二桁増えるとする。つまりは、これがシナプスを通過する人間が、全世界で一桁から二桁増えるということだ。原作、読み進めている。30年以上、これを読まずに生きてきたことを激しく後悔しているところだ。人を変えるだけの力のある物語だと思う。今、世界がこんな風だから、私はこれにとてもとても期待している。だから、祈るような気持ちでいるのである。

いのちは一度限り。いのちはいつか終わるから大切。いのちは受け継がれていく……頭だけではわかっても、なかなかわかることのできないこと。だから、物語が必要なんだと思う。

もう一度見に行きたい。