『笑う大天使』

大好きな川原泉の原作。だけど、これが映画化されるとは思いもよらなかった。あの語りの独特の感じが面白さのポイントだと思うのだけど、それほ現実に役者が台詞で言って面白いか……そう思ったけど、心配要らなかった。原作の「つぼ」の台詞はほとんど出てこなかった。これは、原作とは違う作品として見るのが正しい姿勢だと思う。
もっとも、原作物としてもあまりメジャーではないので、興行的にどうなのかと心配していた。日曜日だというのに、入ってみたら、ずいぶんお客が少なかった。それほどひどい出来だとも思わないんだけどなぁ……。

さて、女の子三人組はなかなか楽しかった。だけど、この三人が、お嬢様ばかりの学園の中で、一人は上級生のマスコット。一人は下級生の憧れのお姉さま。一人は同級生たちのアイドル、というそれぞれの人気の的、というところが、割と少女マンガ的お約束の笑えて楽しい部分だったのに、ずいぶん控え目な描写だった。
庶民なのに、猫をかぶっているという部分はかなり笑えるところだけど、そのあたりも何となく思い切りがよくない。

その反面、主人公の史緒と、生き別れになってた兄の一臣殿下とのしみじみした心の交流の部分は丁寧に描かれていて、うっかり最後のあたりでうるうるしてしまった。原作者の描く漫画世界でも、親をなくす子供の話がとてもたくさん出てくる。そんな子供の寂しさにはとてもリアリティがあって、それがコメディの中にあるのが、独特の世界観を作っている。それを思うと、この映画はこれで大正解なのかも、とも思った。