『間宮兄弟』

二週間ぶりに映画館で映画を見た。ゴールデンウィークだというのに、見たいと思うのが全然かかってなかったので。
さて、娘が配役が好きだから見たいというので、『間宮兄弟』見てきた。私としては何の予備知識もなく行って、つまらなくてもいいや、ぐらいの気持ちだったのだけど、意外なくらい面白かった。
とても現代的でお洒落な「寅さん」だと思った。「寅さん」の笑いには、「本人が真面目で真剣であればあるほどおかしい」という特徴がある。それから、女性にある意味「気に入られ」るし、人からは概ね嫌われることなく愛されるのだけど、恋愛感情を持ってもらえない。そして、家族想い。ほろりと来るところがいっぱいある。こういうところが、共通していると思った。
普通の兄弟にありがちな、相手への対抗意識と甘えから来る刺々しい会話、というのがない。会話が普通に丸い。一見普通の人たちに見えて、実は普通でないのはそういうところだ。男性二人で、体育会系のノリでもなく、一緒に仲良く暮らせるなんて、なかなかないことかも知れない。そして、暮らしの隅々にまで浸透している遊び心。
何となく、二人がスターウォーズC3POR2D2に見えて仕方がないのだが。お兄さん、説得力あるし、弟、何でも器用にできるし。このうまく噛み合った凸凹具合、というのが、二人でうまくやっていく秘訣かも知れない。
さて、間宮兄弟をめぐる女性たち三人だけど、女って、若い頃には、自分を幸せにしてくれる男性にはなぜか興味が持てなくて、身勝手なやつのところに行ったりしちゃうんだよねぇ……。どうしてなんだろう。その身勝手さを、男らしさとか強さと錯覚してしまうからなのかな。まあ、周囲を見回すと、いい気になっていたモテ男性たちの末路もそれなりに厳しいようだ。間宮兄弟の株が、女性たちの間でじわじわ上がっていくようで、ちょっと応援したくなった。

「兄弟っていいなあ」と観た人に思わせるのがこの映画の隠れた目的だとしたら、大成功だと思う。客席の一体感も、「オールウェイズ」を超えていたと思う。映画館が明るくなると、みんな口々に「楽しかった」「かわいい」と言っていた。自分が何を感じているか、周囲の人に聞かれてもかまわないと感じているのは、その一体感のなせるわざだ。また、こんなのが観たい。


(追記)
映画は初日からお客さんがいっぱいだったようだ。見て、「いい映画だ」と思ったものに、お客さんがたくさん来ると私も嬉しい。

ところで、私も大学時代と社会人になってから20台半ばで結婚するまで、ふたつ年下の妹と二人暮らししたことがある。私たちも映画や遊びの趣味はかなり合うのだけど、性格が正反対なので、最初はとてもうまくいっていた。あまりに心地よくて「いつか、お互いを『○○ばあさん』と呼び合いながら二人暮らしっていうのもいいね」なんて言い合ったりもした。それが壊れるきっかけって、それぞれに彼ができること、なんだな。ちょっぴり苦い思い出だ。映画の中の姉妹が、「こんな風に二人で遊ぶこともなくなっちゃうんだろうね」と姉が言い、「間宮兄弟は今でも一緒に遊んでる」と妹が言う。だけど、そうお互いが望んでいたとしても、なかなか難しいと経験的に思う。まあ、だからこそ「この人たちだけはうまくいって欲しい」とも思う。

江國ワールドというのは、ある種おとぎの国のように住み心地がいいんだけど、現実を照らして考えると、「そうもいかないね」というところが共通してあるんだろうか。多くは読んでいないので何ともいえないのだけど、『東京タワー』にはそれを強く感じた。生まれたときから一緒にいる家族と、ずっと仲良くいられるなんて、もしできるとしたら、こんな楽しいことはないだろう。どうやったらできるか、というヒントが、ひょっとしていっぱい物語の中に隠れているのかも知れない。