『The有頂天ホテル』

今日、『The有頂天ホテル』を見てきた。まずは結論から。超お勧め。見ないと損だ。
ともかくおかしくて楽しい。時間が進行していく内に、それぞれの事情がだんだんとわかっていく。そして、それぞれが「やりたいことをする」というラストに向かっていく。もちろん、それぞれがやりたいことをやって、その向こう側に望んでいた未来が実現するかどうかはまったくわからないまま映画は終わる。だけど、時は、一年の決着をつけて、新しい年を迎えようとするおおみそかである。そんな明るさを感じさせる、一同がすべてが集まるカウントダウンパーティーが楽しい。

ところで、はじめて知ったことだが、『グランドホテル形式』という、物語の場所を固定する映画のジャンルがあるそうだ。そういう名前の映画が発端だとか。その出演者の名前を四つのスイートルームにつけている。こんなところは、とてもおしゃれなこだわりだと思う。この『The有頂天ホテル』の場所も、アンチークなヨーロッパ風ホテルの内部のみ。そして、時間は大みそかの一日のみ。夢の競演という名にふさわしいたくさんのキャストが、それぞれその一日をどう過ごしていたか、緻密な構成によって、混乱させず飽きさせず、最後まで見せていく。こんな感じは、舞台劇を思わせる。そう言えば、劇が進むにつれてだんだん謎が明らかになっていってクライマックスを迎える、というのは、一幕物の演劇で見かける展開だ。
それにしても、キャストが、群像劇ではあるけれど、一人ひとりキャラクターが存在感があって、「その感じはわかるわ」という台詞が満載だ。特に、女性たちがみんな添え物じゃなく、それぞれ「いい感じ」なのが個人的にはとても好きだった。

さて、一本通った芯というか、すべての人と関わりを持ちながら進んでいくのは、副支配人。見ていると、次々と持ち込まれる問題に、てきぱきと判断していくのが、とても有能な人、という感じで頼もしい。従業員たちは概ね誠実で有能。ホテルマンの鏡だ。客は、ひとくせもふたくせもある人ばかり。従業員はジェントルマンだけど、お客は庶民も庶民、ついこの間までお金の正しい使い方も知らなかったかのような人ばかり。そんな人たちが唯一気張って高級ホテルに泊まりに来るのが、日本の大晦日。確かにそうだ。こんな面白いものが出現する時間と場所、他にはなかなかないかも知れない。

テーマは、やっぱり「やりたいこと、やろう」という点にあるんだろうか。客室係のハナちゃんが言う「言いたいやつには言わせておけばいいじゃない」というのは、大賛成なのだけど。『チョコレート工場』のときに、テーマは家族と子供たちの関係だ、と言われて、じゃあ、映画の面白さとテーマは必ずしも関係ないね、と感じた。それと同様のことを今感じている。ともかく楽しかった。自分の楽しさを分析するのは、今夜はやめておこう。