『ティファニーで朝食を』『アイズ・ワイド・シャット』DVD

つい数日前に、ほのぼのと良い映画を観といて、その余韻もさめやらぬ内に、まったく違う雰囲気の映画を立て続けに家で見てしまう。
これは、言うならば、「もったいないから見なきゃ」という半ば義務感からの映画鑑賞である。
娘がリビングのテレビを占領してみている映画を、ついでに見るとか、我が家のDVD棚にある日忽然とあらわれた『キューブリック全集』の元をとろうとかいう、主婦的発想からなんである。

ティファニーで朝食を』は、何度かテレビでも見たことがある。
まだずいぶん若い時だったので、オードリー・ヘップバーン演じる主人公が、結婚詐欺すれすれに男性たちからお金を搾り取るような女性なのが、ぴんとこなかった。
それと、作家が、女性実業家のツバメみたいな立場の人だってことも。
それぞれ、男性・女性として異性をひきつける魅力があって、それでそこそこいい暮らしができるほどなのに、安易な道に進んできたからつけがまわってきて、今はしあわせとは言えない、という共通点がある。
似たもの同士の恋。原作者は、あらかじめうまくいかないことがわかっている恋物語、として描いたような気がする。カポーティだし。
ところで、成功するにはふたつの道がある、と思う。
もちろんどっちに進んだところで結局成功できなかった、というパターンもあるだろうけれど、ともかくふたつある。
未来は、約束されていても、約束されていなくても、どっちであっても、両方ちょっぴりずつ寂しい。
だから、二人でいようね……ということになるらしいが、映画と原作では結末が真逆だそうだ。
この映画のハッピーエンドは嫌いではないんだけど。

さて、『アイズ・ワイド・シャット』である。R18指定だそうだけど、R30指定という枠はないのかな。
女性のヘアヌードがこれでもか、とばかり出てくるから、という理由もあるけれど、
これから結婚する人にはあんまり見せたくない。
語られていることは、とても切実で重い問題なのだけど。
はなっから失望して結婚を眺めるのは、さすがに寂しいと思うので。

きれいな女の人は、男性からちやほやされるのを喜んでいるんだと、多くの人が思っている。
だけど、私の高校時代の、誰もが美人と認める友人は、男の人が、きれいな女をちやほやするのも、きれいじゃない女に無礼な態度をとるのも、結局、女は人間だと思っていない、同じ心の表裏なんだと言っていた。
美人なのにそんなことを言う彼女をとても尊敬していた。
何となく、そんな魅力的な女性たちが持っている漠然とした不安や葛藤と、それによって誘発される男性の不安を、サスペンス風の物語にしたような映画だった。
どっちに転んでも、人間が性別を超えた人間性を掴むのは、とても困難だということなんだろうか。

ところで、絵が好きなので、映画の中の室内に絵が飾ってあったりすると、思わずしげしげと見てしまうのだけど、どうも、この夫婦の家にたくさん飾ってある絵の数々が、あまり趣味の良い物に思えなかった。
外に着ていく服などは、かなりお金もかかっているようなのに。
これは、成功した医師の主人公や、奥さんが、裕福な家の出身ではないことを暗に示しているのだろうか、と思った。
この人、あちこちで、人を信用させるために、自分の医師免許証を見せて歩く。
ちょっと、嫌味でもあるし、滑稽でもある。
天下のトム・クルーズなのに。
この映画は、「細部までが語る」映画だと、そう思った。