『Mr. & Mrs. スミス』

アクション映画が特に好きということはないのだけど、たまに見る。理屈抜きにすかっとしたかったら、アクション映画に限る。
ただ、アクション映画ですかっとするのにも、いろいろと条件がある。基本的にメインの人たちは身体能力が高い人たちでなくてはいけない。某特撮ドラマでは、主人公があまり運動神経がいい人でなくて、平素の身のこなしが、ヒーローのリアリティを崩していた。演技力はある人だったから、逆にとても残念な気がした。
だけど、身体能力が高くても、それをいいことに、こてこてに「男祭り」なのは駄目。それでスカッとしたかったら、映画など見ずに、スポーツ番組を見るほうがいい。映画の「すかっ」というのは、そういうことではなくて、フェイクを混ぜた・・・・・・うまく言えないが、現実を超えた虚構のパワーがあった方がいい。その意味で、女性で脅威の身体能力を持つ『チャーリーズ・エンジェル』などはその「すかっと」映画の代表格だと思う。
さて、『Mr. & Mrs. スミス』である。「エージェント・スミス」なんてのが、『マトリックス』にも登場したけれど、日本語のニュアンスでいくと『鈴木さん』くらいのありふれた感じだそうだ。わけありの人が偽名を使って一般市民を装っている、という感じが、タイトルから匂ってくる。おしゃれなタイトルだと思う。アンジェリーナ・ジョリーの強さは、『ツゥーム・レイダース』でもすっかりお馴染みだけど、それでもブラッド・ピットを相手に互角に戦う、というのは、普通はあり得ないだろう。しかし、それでもかなりリアルに見せてしまうところが、一流のプロという感じだ。最新の飛び道具を使いまくっての派手な夫婦喧嘩、迫力である。
派手な夫婦喧嘩というと、『ローズ家の戦争』があったけれど、これは愛がなくなった夫婦の、別れ話が発展した喧嘩だった。それに対して、こちらはまったくの痴話喧嘩。
続いて、ふたりの濡れ場が続くわけだけど、その前の殴り合いと雰囲気がまったく同じ、というところが、なんともおかしい。隣人が、騒ぎを心配してやってくるけれど、二人とも顔に傷を作って、おからさまに事後の雰囲気を漂わせて出てくるので、隣人が思わず苦笑してしまう、あのシーンはいい。あれが、大人がすべて共有している「誰もが知っている秘密」ってやつだろうか。
二人が倦怠期のカウンセリングを受けているところから映画ははじまり、同じシーンで終わるのだが、結婚には、ある程度スリリングなものがないと退屈してしまう性格の人がいることを意味しているのかも知れない。普通は、奥さんが安定を求めるので、夫がそれに引っ張られるという家庭が多いのだろう。この家では、二人とも熱くて、なおかつ相手を読み間違えていた、というところが、ポイントだと思う。たまたま二人とも殺し屋だったけど、それは、どこの家庭も抱えている問題を極端にして見せただけのことかも知れない。