『コープス・ブライド』

初日に娘と一緒に見てきた。
映画館を出てくる時に、観客がその映画の空気に影響されてしまうのはよく言われる。例えばヒーローものだと、意気揚々とした感じ。悲しい話だと、ちょっと肩を落として言葉少なで悲しそうに。恐い話だと一緒に来た人とひっきりなしに「恐かったねぇ」と話して、不安をやわらげようとしたり。
ティム・バートンものは、亡霊やお化けが出てきても、それがあまり恐くない。まだ夜もそんなにふけていなかったので、娘と二人で、みなとみらいの街をおしゃべりしながら散歩して帰った。話題は未来の楽しいことばかり。そんな映画だった。
お話や絵の雰囲気は、同じくティム・バートンの『ビートル・ジュース』『スリーピー・ホロウ』『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』『ジャイアント・ピーチ』にとてもよく似ている。何がやりたいのかここまではっきりしていると気持ちいい。
しかし、映画としての技術は確実に進化していて、人物の動きのなめらかなのがとても快感だった。ストップモーションのはずなのに流れるようなカメラワークも。そして、脇をかためる人物がとてもカリカチュアライズされていて、確かに、子供が世界を見ている時って、まさしくこの感じだ、と思った。大人になると、子供だった時の「世界の見え方」を忘れることが多いのだけど、何かを見てふいにリアルに思い出すことがある。ティム・バートンは、なんだって、こういうものをひとつも忘れずに持っているのだろう。映画を見る醍醐味のひとつだ。
主人公の声をジョニー・デップがやっている、というので話題だが、声だけ聞くと、この人こんなに味のある声をしてたっけ? と新鮮な感じがする。英語の台詞がちゃんとフレーズで耳に残る、良い声、発音をしていると思う。たぶん、人形のモデルもジョニー・デップだと思うけれど、すらっと細長い手足と、とろんとしているようでインパクトのある印象的な目で、怪奇ものにはもってこいの容姿だ。
役者からインスパイアされてお話ができる、というのは、映画でもドラマでも普通にあることだけど、それが「ありきたり」で終わらないのが役者として一流の証かと。
というわけで、おすすめの一作である。