タバコと健康

『ボクらの時代』の動画が某所にアップされていた。
それを見て、どういうきっかけで「実力がある人が出てきて、人気者になっていくのが、日本では逆」という話になったのか、思い出した。
市川海老蔵さんが、今、舞台で楽に動くために、肉魚を食べないでいる、という話をしてて、
二十代ではむしろ一生懸命やって、それができなくなった時にどうするか……という話になって、
それからだった。
市川さんの食のコントロールの話は、藤原さんがずいぶん真剣に聞き入っているので、やっぱりこれは重要課題なんだな、と思った。

以下、私の健康管理の話。
私の体調管理の経験から優先順位をつけると、食事、睡眠、運動、となる。
ただ、その上位に実はストレスケアがある。
ストレスをそのままにしておくと、摂食障害睡眠障害を起こすし、その結果身体も動かなくなってくるので運動もままならなくなる。
だから、それをこまめに解消しておくことが、健康に繋がっていく。

そう思うようになったのは、ここ10年くらいだろうか。
若い頃は、ストレス解消のための、お酒とタバコとコーヒーがどうしてもやめられなかった。
あと過食と睡眠不足。
お酒を飲んだりタバコを喫ったりしても、翌日、目立った変化があるわけではない。
成長期ですら、一日の背の伸びはわからないのと同じだ。
身体に悪いということが、どうしてもぴんと来なかった。
だけど、ある一定の時間が過ぎると、確実に悪い影響が身体や心にあらわれる。
これは怖いことだと、今は思うけど、その時にはわからなかった。

妊娠を意識しだしてから、タバコだけは何とかやめようと幾度も禁煙した。
一年くらい禁煙できて「成功した」と思ったこともあった。
それも、一緒に暮らしている人間が目の前ですぱすぱ喫うのを見て、「もう私は中毒状態じゃないんだから」と言い訳して、一本喫って、後は元の木阿弥。

それが、14年前にすっぱりやめられて、今に至るまでまったく喫っていない。
それはこういう事件だ。
娘が小学校で、タバコと肺ガンについての特別授業を受けて来て、帰ってくるなり、自宅で仕事をしながら、いらいらタバコを喫っていた私に、

娘「お母さん、タバコを喫うと、肺ガンになるんだって」
私「喫う人が全部なるわけじゃないのよ」
娘「(聞いてない)お母さんが、肺ガンで死んじゃったら、私どうしよう!」
私「どう……って」
   娘、じわじわ顔を歪めて、悲しそうに泣き出す。
   私、驚いて娘を見つめ、あわててタバコを灰皿で消し、娘を膝に抱き上げる。
私「大丈夫だよ。お母さん、あんたが大人になるまで絶対に死なないって」
娘「ほ、ほんとう?」
私「約束する」

この、子供が泣き出すところは、なにやらデジャブのような。
となりのトトロ」で、入院しているお母さんが外出取り消しになって、平素はしっかり者の長女のサツキが「お母さんが死んじゃったらどうしよう」と泣き出すのとそっくりだ。
ああも人前で、顔中口だらけにして泣けるのは、思春期前の子供の特権だな……なんて変なところに感動している場合ではなかった。
「死なない」と言ったって、死のリスクは、どれだけ気を配っても決してゼロにはならないんだから。
できることは、そのリスクをこつこつ減らしていくことだけ。
神様ではないんだから、本当に娘が大人になるまで死なないことは確約できない。
でも、努力をすることで、少しでも娘の気持ちが平和になるんだったら。
自分の健康のためなのに、自分のためじゃないというのも面白い。
ちなみに、その時に消したタバコが、私の生涯最後のタバコになった。
不思議なことに、それ以降、喫いたいという気持ちがなくなってしまった。
以前の禁煙の時には、タバコの自販機を見るたびにイライラしたけれど、今度は自販機があることにも気がつかないほどだった。
娘に泣かれると、なぜこうなのか、というのはわからない。
そう言えば、昔、妹に泣かれてもこうだったっけ。
それ以前に、母親や元夫から「みっともないからやめろ」と言われた時には、「絶対にやめるもんか」と心の中で悪態をついた。
イソップ童話の「太陽と北風」の話って、現実の、当たり前の物語なんだと思う。

ちなみに、お酒は、我がアイドルのお仕事の成就を祈願したのをきっかけに量をどんどん減らし、数年前に禁酒に成功した。
コーヒーは、ハーブティーに置き換えたら、あっさりとやめられた。

全部いっぺんにやるとうまくいかないと思うけれど、こうやってひとつひとつ片付けていくと、生活が改善されて、ストレスも減る。
縁が切れてはじめて、ストレス解消のためにやっていたものが逆にストレスを作っていたことを、はっきりと知る。

というわけで、私の大好きな役者陣も、ヘルスケア・メンタルケアに励んでいただければ、と思う。