『嫌われ松子の一生』

初日で見てきた。
少女の宝箱をひっくり返したような、豪華で楽しい映画だった。ミュージカル映画のようなポップな絵が出てきたかと思うと、家族ドラマのようなシリアスな場面が出てきたり。登場する人たちも、お笑いの人やベテラン、歌手など、バラエティに富んでいて……。パンフレットを見て、改めてそのすごさに驚いている。それぞれが全部印象が強く残っている。

それにしても、すごいジェットコースター人生だった。中谷美紀さんがカメレオンのようにシリアス・コメディ自由自在の「松子」を生きていた。岡田くんが、本読みの段階ですでに感情まで作り上げている中谷さんを見て「やべっ」と思ったそうだが、なるほど。だけど、愛すべきヒロインであり、松子が神様だとしたら神様を信じてもいい、とまで甥の笙は言うけれど、こんな人になりたいと思う人はいないだろう。その点、コメディとして書くしかないヒロインだと思う。まあ、男性に執着してもリスクの割にはあまりいいことないから、女の子は一生一人で生きていけるように、子供の頃から訓練していた方がいい、というメッセージであれば、私は大いに同感だ。

それから、松子の親友のめぐみさん。あの女優さん、声がすごく素敵だ。気風のいい台詞がきまってて、優しくて、行動力があって、思うことずばずば言ってくれて、こんな友達がいたら、悪い男なんかにひっかかることもないと思うのだけど、やっぱり引っかかっちゃうのだな。どんなにその人を愛してくれる人がいても、悪い男性の方にいってしまう女性……一種のこころの病気なのかな、とも思う。私の友達だったら、やっぱりそんな人生を肯定的には見られない。どうしてあげることもできなかった、と悲しく思うに違いない。

それにしても、最後の、アイドル狂い……しかし、光GENJIの内海君て(笑)……なるほど、年がいってからアイドルにはまる女性というのは、こういう目で見られているのか。道理で「旦那に秘密のエッチしませんかぁ?」なんていう出張ホストの広告メイルがしつこく送りつけられてくるわけだ。また、私よりさらに年上だという自己申告の人から、「もっと大人の女性として」とコンサートやイベントの自粛を勧告するメイルが来るわけだ。締めくくりの言葉が「これからもV6を応援してあげて」なのはなぜだ。なぜ、「大人の女性の自覚に目覚め、V6のファンをきっぱりとやめろ」と書かないのだ。そんな感じで、映画のこの部分に妙に引っかかってずっとぶりぶり怒っている。娘は「お母さんのはまり方と明らかに違うから関係ないじゃない」と言う。それでもすっきりしないのは、なぜなんだろう。

何かに執着している人間というのは、傍から見て滑稽なものなのに違いない。何となく、100%笑うこともできないし、100%受け入れることもできない、私にとってはそういう映画だった。