:『失敗から学べるものは何ですか』05/9/18 畑村洋太郎さん

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畑村洋太郎さん

テーマの『失敗から学べるもの』という言葉から、瞬間、文学的説教のオンパレードになるかも知れない、なんて身構えたけど、杞憂だった。機械工学の先生ですもの、そんな無駄なことで時間を使ったりするはずがないのに。この年になるとろくでもない記憶が山ほど積み上がっちゃって、つい。
ところで、お名前を失念したけど、日本のロボット工学の大御所の先生で『非真面目のすすめ』という本を書かれた方がいて、読んでとても感動したことがある。もうかれこれ25年も前になるだろうか。私が弁証法について学ぶきっかけになった一冊である。新しいものを作ってきた人たちの「こうしたら、こうなった」というお話は、本当に面白い。目下、『失敗学のすすめ』も拝読しているところ。三冊と平行して読んでいるので、なかなか進まないけど、これ、かなり面白い。私的にかなりおすすめだ。
しかし、「失敗について学ぶ」という発想は、日本がここまで工業大国になった今でも、最も新しいものだというのは、何だか信じられない。企業ではQCなど、良い物を生み出す為の、欧米産の技術は盛んに取り入れられてきたのに。
そんな日本の体質として、失敗した者をマスコミが袋だたきにする、という悪習がある。新しいものをはじめようとする者を応援しない。そのくせ、成功した者に恥じらいもなくおもねる……何だか、ひどく卑しい人種のように感じてしまうけれど、目先のことに囚われやすい国民体質と同根だと思う。
でも、そういう体質に対する反省の言葉も最近よく聞くようになってきたので、少しずつよくなっていっているのだと思う。失敗は言い換えれば、知識として、財産の一部なんだと、私は思う。

ところで、岡田くん、新幹線を乗り過ごしたのが失敗の告白なの? 大丈夫、新幹線の上りと下りを間違えて乗った人がここにいるから。まだまだ甘いね……なんて失敗自慢するのが流行ったら、面白いかも知れない。