『プロデューサーってなんですか?』 05/08/21 鈴木敏夫さん

-8/21放送
鈴木敏夫さん
テーマ:「プロデューサーってなんですか?」
プロデューサーの一番の資質というのは、おそらくはご本人も自覚できない「人を把握する才能」ではないだろうか、とお話を伺っていて思った。それは、言葉では言い表せないような魅力だったり、哲学だったりするかも知れない。哲学の部分は、かなり大きいような気が、お話を伺っていてする。物事の裏ばかり考える者は、「監督のやりやすいようにする」とか、「できるだけたくさんの人に見て喜んで欲しい」とか、そういう理想の部分のコメントを聞いても、それはビジネスの仮面の部分だと捉えるかも知れない。しかし、もの作りという仕事に関して言えば、それはとても矛盾した天秤の上に乗った問題なんだと思う。ビジネスの部分がなければ成り立たないのに、それとは無関係の純粋な情熱のようなものが、作られたものにどうしても反映してしまうと思うからだ。それにしても、宮崎監督が、映画の完成が近くなると、「お客さん、来てくれるかな」と言い出すというのは、何だか胸の詰まる話だ。あれだけのクオリティのものを作って、あれだけの名声を勝ち取っても、そういう不安からは逃げられないとは。それを踏まえた上でクリエーターを解放して「好きなことをさせる」立場の者として、プロデューサーが存在する、というお話は、いろいろな「ものづくり」の場面で当てはまりそうだ。編集者が、作家の「最初の読者」であるように、プロデューサーは、監督の「最初の観客」だという言葉で、何か目がひらけたような思いがした。鈴木さんご自身は、つくる能力がないから、プロデューサーになったのだと言われるけれど、優秀な読者、観客である能力にもものづくりの能力以上にランクがあるような気がする。ただ、鈴木さんの場合、それが極めて直観的なものなのが、非常に天才的な感じがする。そして、「間をつなぐものとしてのコピー」とか、おそらくはお仕事をしている時に自分でつかみ取られた、受け売りでない「法則」のようなものをたくさん持っておられるところが、私としてはとても惹かれてしまう。
岡田くんのファンになってからというもの、私自身もエンタテイメントを生み出す人々に興味を持つようになった。人間の欲望の内、「便利なものが欲しい」というものを満たすものづくりは、それが便利かどうかという部分が普遍性が高いものだから、楽な部分もある。楽ではないのは、競争がシビアだというところだろうか。しかし、「楽しみたい」という欲望を満たすものづくりは、もっと混沌として、つかみどころがない。岡田くんが主演した「タイガー&ドラゴン」などでもそうだったけど、それが観客に受け入れられるかどうか、それは作り手にとっても未知な部分が多過ぎる。もちろん、だからこそそれが受け入れられた時の喜びも大きいのだと思うが、常に受け入れられなかった時の不安から逃げられない。それをイメージすると、ものづくりがどんなに好きでも、それを仕事にできる人は、ある意味選ばれたひとだけだ、と、小心者の私などは思ってしまうのである。作品についてのコメントは、批判的なものの方が参考になる、という鈴木さんのお言葉に、うなってしまった。
今後も、「ものづくり」に携わるゲストの方のお話をたくさん聞けると嬉しい。