『戦争はなくならないんですか?』 05/08_14 小川和久さん

-8/14放送
小川和久さん
テーマ:「戦争はなくならないんですか?」
今回は、とても書きにくい。本当はあまり書きたくない。後になって忘れたら困るから、あらかじめ言っておこう。専門家が、自分の専門について他者に「あなた、こんなことも知らないんですか」、もしくは「あなたは何も知らないが、私は専門家なんだから」というニュアンスで物を言うのは、基本的に反則だと私は思っている。人間が何かを知っているのは……知識が多い少ないとはまったく無関係に……「たまたま」だと思う。その「立場」というのが、「納税者」だと言うのも、この日本では詭弁に過ぎないだろう。それでいくと、すべての日本人は大容量コンピューター並に物を知っていなくてはならない理屈になる。
こういう物の言い方をする人間に、人生の中で何人も出会ってきたけど、今になってみるとそれは、常に「危険な局面」だった。自分の信念に合わないことを、ねじ曲げられて強制されるサイレンだった。岡田くん、ご注意あれ。
さてさて、本筋から離れてしまうけれど、岡田くんが最後に語った「その人たちが思い描いていた未来より、よりよい未来を作ること」というのは、コミック『ARMS』の巴武士の台詞ではなかろうか。だとしたら、実は私も好きな台詞だ。それは、不毛の戦いの果てにそれぞれの人間がたどり着く、達観のようなものだ。ともかく、この国の人々が先の戦争で払った犠牲は、筆舌に尽くし難いものだった。それだけは間違いない。その上で未来を見渡した時には、やっぱりその言葉のように考えて努力していくしかないと思う。
「戦争はなくならないんですか」という問いに対して、「なくならないものだと考えて」というのも、「戦争」の定義によると思う。古代からあった日本やヨーロッパの領地同士のいくさのように、同じ言語を持つ同じ人種同士が、戦闘員の半数以上が戦死するような死闘を繰り返すようなことは、今後なくなっていくと思う。ただ、テロを戦争のひとつの形だと考えるとしたら、ベトナムが泥沼化したように、なくすのは困難を極めると思う。
ところで、自衛隊に絡めての「納税者だから」という言葉に対してはアレルギーを感じてしまう。例えば、私が、自分の納めた税金に対して、「ぜひこういう風に使って欲しい」「こういう風には使わないで欲しい」と願ったところで、それは通らないようにこの世はできている。結局、日本はアメリカの命令を無視できないように仕組まれているからだ。逆らったら、何されるかわからないから。いや、わかっているから。他がどういう目にあってきたかを考えれば。
自衛隊の派遣についての巷の意見で、ここの部分「本当は言うことを聞くしかないんだ」ということを述べている人というのはほとんどいない。私にはそれが不思議でならない。もちろん、政治家の口からそんなことは絶対に聞くことはできない。ただ、今の世の中の流れを放置すると、また若い人たちの命を盾にしなきゃならない時代に逆戻りしそうで。だから、語られていることがいかに正論に見えたとしても、「日本をこうしたいんだ」というビジョンを曖昧にしたままの国防の話には、激しい警戒心がわく。その点だけは、いかに無知蒙昧だと罵られても譲れない。
なんか、これだけ書くのにひどく疲れた。疲れるくらいハードなエンタテイメントは決して嫌いではないけれど、どうかほどほどに。