『危機管理って何ですか?』 05/07/17 佐々淳行さん

-7/17放送
佐々淳行さん
テーマ:「危機管理って何ですか?」
さて、ロンドンのテロが起こる前の収録に、後から冒頭と締めくくりのコメントを録音し直しての放送だということだ。日本人の平和ボケと言う言葉、たぶん事件の前と後とでは、リスナーの受け取る重さに差がずいぶんとあることだろう。ギリシャ神話のカッサンドラに絡めて書いたこともあるのだけど、悪いことというのは、それがどれだけ正しく、どれだけ有益な情報であろうと、誰にも聞いてもらえない運命にある。だから、悪いことは自然に隠されていくものだ。「悪い報告は早く」というのは、そういうベースの上で、危機管理をする立場の人であればこそ掴む知恵ではないかと思う。正直言うと、けっこう溜飲が下がるお話ではあった。バブル期に、私がいくら「いつまでもこんなこと続かないから」と言っても、「女は視野が狭い」とか何とかバカにされるだけで、誰も危機感を持たなかった。この手のことは、いくらでもある。
ところで、いつだったか、物事を悲観的に考える性質の人間は、リスクマネージメントを担当するのに向いている、と書いたことがある。つまりは、私はこの時、自分のリスクマネージャーとしての資質に目覚めた、ということだ。『心に地獄図を描け』という佐々さんのお言葉、それがまさに私の心の風景なので、逆に嬉しかった。取り越し苦労ばかりしている、と家族にもバカにされている。しかし、不安に囚われてせっせと準備していると、気持ちが落ち着くし、それがいい結果を生むこともある。まあ、そんな人間と友達になっても楽しくないだろうから、一人で頑張るしかない。しかし、こうも世の中に不安材料が増えてくると、心が楽しまないので、なかなか辛い。
「もしかしたら」は無限にある。人間ができることは有限だから、何をどれだけ準備するか、普段何を考えたらいいか、その優先順位を決める、その方法を知りたい。お話を伺っていて、そんなことを考えた。