『家族ってなんですか?』 05/05/27 山田昌弘さん

-5/29放送
山田昌弘さん
テーマ:「家族ってなんですか?」
どうも、今回は岡田くんにとって愉快でないお話の連続だったようだ。「やっぱり金ですか? 愛じゃないんですか」という言葉、数回繰り返していたっけ。だから、「どっちか」じゃなくて、「どっちも」だと言うのに。子供が病気になっても、病院に診せるお金もない、なんて経済レベルで「愛はあります」なんて、ごまかしだと思う。子供に必要な教育を受けさせる、好きなことをのびのびとさせる、バランスのとれた食事をさせて健康な身体作りをさせる、清潔で快適な環境で暮らさせる……これだけのことをするのに、お金が必要でないはずはない。子供を愛しているから、お金が欲しいんだと言うのに。何のために私が毎日必死で稼いでいると思ってんのよ、ってな感じだ。お金の問題に夢がないなんて、子供を育てたことのない人らしい発想だと思う。概して、女性の方が、子供を育てるに際しての、この現実面においてシビアな傾向がある。だから、女性が結婚相手として一番嫌いなタイプの男性というのは、「金遣いが荒い人」というアンケート結果となる。
日本で結婚したがらない人や離婚する人が増えている理由というのは、お金の問題だという話だった。でも、本当にそうだろうか。少なくとも私の場合は違う。ただ、子供を産みたがらない人が増えたのは、子供をひとり一人前にするに当たってのお金がかかるようになってきたからだ、という指摘は正しいと思う。夫婦で共稼ぎしないと、とても子供を育てられない世帯が増えてきたのは、不況の影響もかなりあると思う。私などは、バブル期でいちばん業界が潤っていた時に、妊娠出産子育てで豊かさを実感できず、離婚して働いて子供を大きくしている間中、ずっと不況だったから、子供を持っていることに対し、どこか切羽詰まった感じはある。私がこの時期を頑張り通さないと、この子の将来は真っ暗闇だ、みたいな。そんな梯子をはずされたような危機感を、誰が味わいたいと思うだろう。日本の少子化は絶対に止まらない。
それと、母子家庭だった時期もあったので、婚外子が差別されている日本の風土が、少子化のひとつの原因だというのは理解できる。つまり、総じて日本では、母親たちは自分の子供を、世間という暴力団に人質にとられているのだ。フランスなどで、PACKS制度ができたのも、その解決を狙ったものだし、子供の人権がともかく守られる、という安心感がないと、女性は子供を産まないものだ、ということは、その後のフランスの出生率が物語っている。岡田くんが、そうしたフランスの制度が「許せない」という気持ちは、私自身、離婚した親を持ったことがないので、否定できないのだけど、婚外子が差別されるのが良いことだと言いたいのではないだろう。そもそも、男性は妊娠しないのだから。PACKS制度はだから、『必要悪』と捉えるのが正しいかと。日本も、たぶんそういう流れになっていくと思う。もちろん、自分の家族作りがそれでは嫌だと言うのは当然だ。だけど、まずは奥さんと愛し合い信頼し合う関係を築くのが基礎だ。そこがないと、子供だって幸せになれない。子供を溺愛する夫が、奥さんを『子供の母親』としてしか見ないと、奥さんの母性は壊れる。父親の愛が子供をスポイルする典型的な例だ。老婆心ながら、岡田くんにご忠告。
ところで、私は、子供に『とっても愛してる』と平気で言う。私の母親はそういう人ではまったくなかったのだが、私の『母親モデル』となった人がそうだったため、自然と真似た。その人の3人の子供たちも、私の理想に近い。あの開けっぴろげの母親の愛情があったらこそ、素敵な人たちに成人したのだと信じている。うちの娘も、親ばか承知で言わせてもらうと、とてもいい子だ。だから、愛情は、表現してこそだと思う。日本人は、何かと「口先だけ」とか言って、言葉の力を矮小化したがるが、これが日本の家族問題と関係があると私は思っている。従って、人からいかにバカにされようと、このポリシーは崩さないつもりだ。先生の、これからの家族に必要なもの、ということでコミュニケーションを特に重視していらしたところが、私への応援メッセージに聞こえて、ちょっと嬉しかった。