エッセイ>裁判員、やりました。護身のことなど

少し前の話になりますが、今年に入って裁判員に選ばれました。

二万人に一人の確率で当たってしまいました。

体験欲の強い私としては喜んでいいはずの事でしたが、問題は、それが強制わいせつ致傷の事件だったことです。

守秘義務があるので、傍聴人も知り得たことしか言えませんが、まあ、胸糞悪くて神経に障る体験でしたね。

強制わいせつは、知人友人からの被害の方が多いそうですが、今回のはまるでドラマの設定のような行きずり・単独犯の犯行で、監視ビデオの映像をはじめとする証拠からしていっても、弁解の余地はないはずなのに、被告は「わいせつ目的」を頑なに否定しているという面倒くさい事件でした。

 

裁判が終わってから、インストラクター稼業の娘の帰宅が毎日遅いのがにわかに気になりだして、娘にいくつか固く約束させました。

1)背後からつけてくる人・車がいないか常に気をつけること

2)遅い時間の時は、できるだけ人通りのある明るい道を選ぶこと

3)歩いている時、ヘッドホンをしないこと

4)襲われたら、大声を出し続けること

5)被害にあったら、時間をおかず、その場ですぐに通報すること

などです。

 

うちは娘が小さいころから母子家庭だったこともあって、身を守るすべを少しでもマスターして欲しくて、小学生の時に合気道のスクールに行かせたこともあるのですが、運動神経のいい娘もなぜか武道が好きになれなかったようで、すぐにやめてしまいました。

たぶん、何も身についていないので心配です。

 

例の裁判の被害者の一人は、背後からスリーパーホールドをかけられて、マンションの空き地に10メートル近く引きずられて首を捻挫しています。

その上、引き倒された時の怪我から推して肩先から転落しています。

もう一人は、自転車ごと引き倒されて、頭を打って全治一か月の大けがをしています。

二人とも、受け身がとれなかったんだなと気が付きました。

女の子は、襲われるとパニックになって声も出ない、すくんで身動きもできない、という子も多いそうです。

そして、被害にあった心の傷も深く、被害者二人は一年を経てもまだ外出もできない、とのことです。

 

私は高校の時に剣道部に入っていましたが、とんでもなくきつい部活だったにもかかわらず妙にはまって、部活の他に街の道場にも時々通うほど入れ込んでいました。

高校一年の秋、神社の近くでいきなり絡みつかれる痴漢にあったとき、反射的に相手も自分も飛び上がるほどすごい声が出て、痴漢が咄嗟に走って逃げていったのは、修行の賜物です。

大学進学と同時にすっぱりやめてしまったにも関わらず、反射神経は今でもかなりキープしているし、今まで何度か転倒した時にも無意識に受け身をとって頭を打ったことがありません。

何より、「電車男」に出てきたような迷惑犯に出くわした時、女性にもれなく絡んでいく犯人が私を飛ばしていくのが、たぶん一番のメリットでしょう。

その時、私は犯人から目を離さずにバックの中にあるもので手製の武器を作って、それで隙を作って逃げるシミュレーションをしています。

これを若い時の私に教えてくれた師範たちには感謝しかありません。

 

女性は、戦って相手に勝つ必要はないけれど、危険を回避したり、危機に直面した時に隙を作って逃げる技術は持った方がいい、と娘ができたときに真剣に考えたことを今回の裁判の経験によって再考しています。

もし資本があったら、女性護身術の場をプロデュースしたい、なんて夢想しています。